重度歯周病の治療方法とは?治療期間や料金についても詳しく解説
- 2023年11月9日
- コラム
歯ぐきから血が出る。歯がぐらぐらする。そんな症状に悩まされる人は、歯周病がもっとも進行した重度歯周病の可能性があるかもしれません。
そうなると自己治癒は難しく一刻も早い専門家による治療が必要になってきます。今回は、重度歯周病がどのようなものなのか。また、どのような治療をおこなうのか具体的に解説していきます。
重度歯周病とは
歯周病には軽度・中度・重度の三段階があり、重度歯周病は最も段階が進んだ状態といえます。歯周病は歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットに細菌が侵入し発症。細菌は歯肉が炎症を起こす歯肉炎が起こし、歯を支える歯槽骨を溶かして歯をぐらぐらにさせてしまうのです。
また、歯垢の中の細菌が唾液などに含まれるカルシウムやリン酸と結合し、歯石という固い物質となって歯の表面や歯根などに付着することもあります。
歯周病には歯周病菌といわれる細菌が関わっているとされています。歯垢が歯と歯肉の境目に増えると、その中に含まれる細菌が毒素を発生させます。
その毒素によって歯肉炎が引き起り、歯周ポケットが深くなっていくのです。
歯周ポケットの中は歯周病菌の繁殖しやすい状態であるため、歯周病菌はさらに増えていきます。
この状態になると、歯周ポケットは6㎜以上に広がり、歯根に歯石が大量に付着した状態になっているのです。食事が困難になるなど、日常生活にも支障が出てきます。
こうなると自己治癒は望めず、歯科医院での治療が必要な状態になってきます。場合によっては、歯を支える歯槽が溶かされ歯が抜けてしまう危険もあります。
重度歯周病により歯を抜歯する場合も多いいです。日本人の歯の喪失原因の40%は重度歯周病にあるとされています。
重度歯周病の症状
重度歯周病の症状にはどのようなものがあるでしょうか。
特徴的な症状として、以下のものがあげられます。
- 口の中がねばねばする
- 口臭が強くなる
- 化膿が進み、膿が出てくる
- 歯がぐらつき、食事などに支障が出てくる
- 歯と歯の隙間が空いて、食べ物が挟まりやすくなる
- 歯茎が下がり、歯が長くなったように感じる
- 歯に痛みが生じる
これらの症状が歯に出ている場合は、歯科医院を受診することをお勧めします。
また歯周病は上記の症状が出ないこともあり、予想以上に歯周病が進行している場合もあります。歯に違和感を覚えたら、歯科医院を受診し検診や治療を受けましょう。
重度歯周病の具体的な治療
重度歯周病の治療は、歯周病の原因を改善することを第一としておこなわれます。口内環境を改善し、場合によっては噛み合わせの調整である咬合調整や、残せない歯の抜歯などもおこないます。
また、歯の状態に合わせ最善だと思われる治療を施していく場合もあります。ここではその具体的な治療について解説していきます。
FMD(フルマウスディスインフェクション)
FMD(フルマウスディスインフェクション)は、口腔内と身体から歯周病原菌を徹底的に除菌していく治療です。歯周病菌は、バイオフィルムと呼ばれるバリヤに包まれた細菌の塊の中に存在しています。
バイオフィルムはブラッシングだけでは除去することができないため、専用の器具で除去する必要があります。
また、歯周病原菌の一部は、体内に生息することができます。その場合は、抗生物質を体内に投与し除菌をおこないます。
歯周外科治療
歯周外科治療は歯石をめくり、歯根についた歯石を除去する治療法です。
歯周病が進行すると、大量の歯石が歯根の深い部分まで付着してしまいます。どうしてもとりきれない歯石は、歯肉を一時的にめくり、歯根についた歯石を徹底的に除去するのです。
その後、歯ぐきをもとどおりに縫い合わせて治癒を待ちます。
歯周組織再生療法
歯周組織再生法は、歯周病によって失われてしまった歯周組織を再生させる治療方法です。歯周組織の再生を促したり、薬剤を使って歯周組織を回復させていきます。歯周再生法には以下のような治療法があります。
CGF・AFG再生治療
血液に含まれるフィブリンという成分には、傷口をふさぎ出血を止めて傷の治りを促進する働きがあります。このフィブリンを血中から取り出し、骨や歯周組織の回復を早める治療がCGF・AFG再生治療です。自分の体の組織を使っているため、アレルギーや感染症のリスクを軽減できます。
また、インプラント治療や歯周外科などの処置に使用することで、早い回復も期待できるのです。ただしデメリットとして、採血のさいに不快症状や皮下出血、神経損傷などが稀におこることがあります。
・CGF(Concentrated Growth Factors)とは
CGFは『完全自己血液由来フィブリンゲル』とも呼ばれ、組織の再生、治癒に働く成長因子を多く含んだ血中のフィブリンを濃縮したゲルです。患者自身の血から作られたもので、抜歯した後の傷口の治りを早くしたり、炎症を抑える効果があります。
骨や歯周組織の再生も促進させてくれ、CGFを使用することで治療期間の短縮にもつながります。
・AFG(Autorogous Fibrinogen Glue)とは
AGFとは、抗凝固剤や添加物などが加えられていない自然に最も近い血漿のことです。血漿とは、血液から赤血球や白血球などの血球成分をとりのぞいた状態のことをいいます。血漿には、毛細血管を通して組織液と循環することで、各細胞に栄養やホルモンを送る働きがあります。AFGに骨補填材を混ぜることでゲル状にも固まります。
このため、インプラント埋入時の骨造成、歯周外科などに利用されています。
幹細胞サイトカイン歯周組織再生誘導法
幹細胞は私たちの体をつくっている様々な細胞を生み出すもとになっているものです。
サイトカインは幹細胞から分泌されるタンパク質で、細胞の増殖や分化の働きを促しています。このサイトカインを利用し、歯周病により破壊された歯根膜細胞や、歯周組織の再生を促します。また、歯周病による炎症の消失や、歯肉の再生、歯肉やせの予防にも効果が期待できます。
GTR法
歯ぐきを切開し、歯周病で失われた骨欠損部位に吸収性膜(メンブレン)という膜を設置し、欠損部位に血液を溜めることで歯周組織の回復を促す治療法です。以前は吸収しないメンブレンを使用していましたが、現在は吸収するものを利用するために処置回数も減り、患者への負担も少なくなっています。
エムドゲイン・リグラス
ゲル状の薬剤を歯周組織の再生させる部分に注入し、再生を促す治療法です。薬剤のみで周辺組織を再生させる方法もありますが、患者さんの血液や骨、吸収粘膜を併用して歯周組織を再生させる場合もあります。
薬剤は体に吸収されるので、除去も不要です。
結合組織移植
重度の歯周病によって歯ぐきがさがってしまった場合におこなう処置です。
歯ぐきがさがると、見た目が悪いだけでなく、知覚過敏などの原因にもなります。
そこで、上顎の口蓋から採取した結合組織をさがった歯ぐきに移植することで、見た目の改善や知覚過敏などを防ぐことができるのです。
遊離歯肉移植
歯周病によってさがってしまった歯ぐきを移植により再生・回復させる方法です。上顎の口蓋から結合組織とコラーゲン繊維が多い歯肉である角化歯肉を採取して、歯肉が足りない部位に移植します。
歯周補綴治療
安定感のない歯を被りものにより連結させ、安定させる方法です。
重度歯周病に侵された口腔内は歯周組織が侵され、歯がとれそうなほど安定感を失っている場合があります。
そんなときに、隣同士の歯を被りものによって連結させ安定感を与えるのです。やり方としてはまず、歯を整形して被せ物ができる状態にします。
次に歯に合った被せ物を制作して、整形した歯に被せます。これによって歯に安定感を与えることができるのです。
重度歯周病の治療期間と料金
重度歯周病の治療期間と料金は、症例によって変わってきます。症例によって治療期間は半年から、数年に及ぶこともあります。
また、様々な治療方法があり料金も数十万から数百万かかるケースがあります。
ここでは、具体的な治療期間と料金の例を記載しました。
治療方法 |
治療概要 |
料金 |
治療期間 |
FMD(フルマウスディスインフェクション) |
歯と身体にいる歯周病菌を除去する方法 |
250,000~300,000円 |
1回で治療完了 |
歯周組織再生療法 |
失われてしまった歯周組織を再生させる方法 |
180,000~200,000円 |
半年から1年 |
歯周外科 |
歯肉をめくり歯根についた歯石を除去する方法 |
150,000~350,000円 |
1週間から2週間で抜歯 |
歯周補綴治療 |
歯周病により安定感のなくなった歯を被りものにより連結させ、安定を出す治療法 |
治療法の種類や使用する被り物により大きく変動 保険適用の場合は1歯あたり4,500円から 保険適用外だと1歯あたり9,900円から |
約2ヵ月から2年半ほど |
上記の表のように、重度歯周病の治療費や治療期間は歯の状態や、受ける治療法によって違ってきます。歯科医師とよく相談し、最善だと思われる治療方法を模索していきましょう。
まとめ
重度歯周病は歯周病がもっとも重症化した状態です。歯周病とは、歯と歯ぐきのあいだにある歯周ポケットに歯周病菌が侵入し、歯肉が炎症を起こし、歯を支える骨が溶け歯の安定性が失われている状態を指します。
重度歯周病の自己治癒は難しく、歯科医院を受診し適切な治療を受けることが必要になってきます。
重度歯周病の治療法はいくつかあり、口内と体内から歯周病菌を除去するFMD。歯周病によって失われた歯周組織を取り戻す歯周組織再生療法。歯肉をめくり歯根について歯石を除去する歯周外科。安定感のなくなった歯を被りものにより連結させる歯周補綴治療などがあります。
また、治療を受ける場合は症状や受ける治療法によって、費用や治療期間も違ってきます。
「世界一やさしい歯科医院を目指す」海岸歯科室では、歯周病治療もおこなっています。重度歯周病でお悩みの方は是非、受診をご検討ください。
監修:理事長 森本 哲郎