正しい歯並びとはいったいどんな状態のこと?
- 2023年11月21日
- コラム
歯並びが悪い、と言う言い方は良くされますが、では悪くない、つまり正しい歯並びとは一体どんな状態なのかわかりますか?
もちろんこれは正確に数字として定義されるわけではありませんが、歯並びが正しいというためにはある程度の条件がそろわなければなりません。
では、歯並びが正しいという状態とは、どんな条件となるのでしょうか。
さらに歯並びが悪いとどんなデメリットがあるのか、歯並びが正しくない時には矯正などの処置が必要なのかといった疑問に対して、説明していきます。
正しい歯並びとはどんな状態?
ではまず、正しい歯並びとは一体どんな状態なのかについてみていきましょう。
次のような条件をすべてクリアできれば、正しい歯並びということができ、どれかの条件がクリアできない場合は、完全に正しい歯並びとは言えません。
しかしそれがどの程度のものなのかはケースバイケースとなりますので、やはり専門家の意見を聞いてみるのが正解です。
上下の歯の噛み合わせ
正しい噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯を少しだけ覆っています。
これは、噛む際に効率的に食べ物を切ることができるようにするためです。
前歯と奥歯の間の重なり具合がちょうど良いと、噛む力が適切に分散され、歯に過度なストレスがかからないようになっています。
歯の並び
歯が一列にきれいに並んでいることは、見た目の美しさだけでなく、口腔衛生にも重要です。
歯が正しく並んでいると、歯磨きが容易で、虫歯や歯肉炎のリスクを低減できます。
また、ねじれたり重なったりする歯は、噛む機能に影響を及ぼし、食物を適切に咀嚼するのが難しくなることがあります。
均等な噛み合わせ
正しい噛み合わせでは、上下の歯が均等に接触して、噛む力が全ての歯に均等に分布します。
これにより、特定の歯に過度な負担がかかることがなく、歯の摩耗や損傷を防ぎます。
均等な噛み合わせは、顎の筋肉のバランスが取れるので顎関節が正常に機能します。
顎の位置
正しい歯並びは、上顎と下顎のバランスの良い位置関係に寄与します。
このバランスが取れていると、顔のプロファイルが自然で美しく見え、顎関節にストレスがかかりにくくなります。
顎の位置が適切でないと、噛む際に不快感や痛みが生じることがあり、これが顎関節障害の原因となるのです。
歯並びが悪いとどんなデメリットがある?
ではもし歯並びが正しくない状態、つまり歯並びが悪いと、どんなデメリットがあるのでしょうか。
まずひとつは見た目の問題です。
歯並びが悪いと一般的には他人から見ると、外見的にマイナスポイントとなることがあります。
さらにそれ以外にも健康面に関するネガティブな要因にもなりますので、歯並びの悪さは単に見た目的な問題と片付けるわけにもいかなかったりするのです。
外見的な問題
歯並びが悪いと、外見的な自信の喪失や自己意識の問題を引き起こすことがあります。
人はキレイな表情や笑顔を社会的な魅力と見なしがちですから、歯並びが悪いと好印象を与えられず、時にネガティブなイメージを与えてしまうかも知れません。
歯並びの問題は人とのコミュニケーションや社会生活に影響を及ぼす可能性がありますし、それを自覚してしまうと、自意識が低下してさらに他人とのコミュニケーションがうまくできなくなってしまうこともあり得ます。
口腔衛生の問題
歯並びが悪いと、ブラッシングやフロス使用が困難になります。
特に、重なったりねじれたりした歯の間には食べ物の残りかすが溜まりやすく、これがプラークの蓄積と虫歯の原因となります。
さらに、乱れた歯並びは歯肉炎のリスクを高め、これが進行すると歯周病につながり、最終的には歯の支えとなる骨を失うことにも繋がってしまうかもしれません。
この歯周病は、歯を失う主要な原因の一つであり、軽視できない症状と言えます。
噛み合わせの問題
噛み合わせが均等でない場合、特定の歯に過度な圧力がかかり、歯の過度な摩耗や損傷のリスクが高まります。
さらにこれは、時間とともに歯の破折や亀裂の原因となり得ます。
噛み合わせが正しくないと顎の筋肉や関節に不必要なストレスをかけ、長期的な顎の痛みや機能障害を引き起こす可能性があります。
顎関節の問題
不適切な咬合は、顎関節に過度の負担をかけ、顎関節症候群を引き起こす可能性があります。
これは、顎の痛み、顎を動かした時の異音、開閉時の制限など、さまざまな症状を伴います。顎関節の問題は、食事や会話時の不快感を引き起こし、生活の質を低下させることがあります。
矯正するべき歯並びにはどんな種類がある?
歯並びが正しくない時に矯正治療を検討するための基準は、主に機能的な問題、美的な懸念、口腔衛生の状態によって判断することになります。
まず、噛み合わせが不均等であるか、特定の歯に過度の圧力がかかっている場合や、噛む際の不快感や痛みがある場合には、機能的な改善が必要です。
美的観点からみれば、歯並びの乱れが自信の欠如や自己意識の問題に繋がっている場合、矯正治療が自信を取り戻す手段となることでしょう。
口腔衛生に関しては、歯並びの問題が清掃を困難にし、虫歯や歯周病のリスクを高めている場合に矯正治療が推奨されます。
不正咬合(マルオクルージョン)
不正咬合にはいくつかの形態があり、上下の歯の噛み合わせが適切でないことが共通しています。
過咬合は上の歯が下の歯を過度に覆う状態を指し、これにより噛む機能に影響が出ることがあります。
開咬は前歯部分が噛み合わず、食べ物を噛み切るのが難しくなり、発音にも影響を及ぼすことがあります。
下顎前突は下の歯が上の歯よりも前に出ている状態を指し、見た目の問題だけでなく、噛む機能にも影響します。
乱杭歯(クラウディング)
歯の混雑は、十分なスペースがないために歯が重なり合っている状態を指します。
これは清掃を困難にし、虫歯や歯周病のリスクを高めます。
歯の重なりは歯石の蓄積を促し、最終的には歯肉の退縮や歯の土台の損傷につながることがあります。
隙間がある歯並び
隙間がある歯並びは、特に前歯の間に見られる不自然な隙間を指します。
これは遺伝的な要因、過剰な組織の成長、あるいは噛み合わせの問題などによって引き起こされることがあります。
隙間がある歯並びは、食べ物の詰まりやすさや美的な問題だけでなく、発音にも影響を与えることがあります。
過密歯
過密歯は、歯が多すぎて適切に配置できない状態を指します。
これは、永久歯が乳歯の後に生えてきた際に適切なスペースがない場合に生じることがあります。
過密歯はしっかりと歯磨きできない原因にもなるため、虫歯や歯肉炎のリスクを高めてしまいます。
反対咬合(クロスバイト)
クロスバイトは、上の歯が下の歯の内側に咬み合う状態を指し、通常は側面歯で発生します。
これにより、顎の成長に影響が出ることがあり、顎関節症候群の原因となることがあります。
クロスバイトは、歯の摩耗や不均等な筋肉の発達を引き起こすこともあります。
突出した歯
突出した歯は、特定の歯が他の歯よりも前方に位置する状態を指します。
これは、見た目の問題となることが多く、事故や怪我の際に歯が損傷しやすくなるリスクも伴います。
また、突出した歯は噛む機能にも影響を与え、噛み合わせの問題を引き起こすことがあるでしょう。
歯並びを正しくするための治療法の種類は?
歯並びを正しくするための治療法には、主にワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正などがあります。
ワイヤー矯正は金属のブラケットとワイヤーを使い、歯を徐々に動かしていく方法です。
裏側矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に取り付け、目立たない方法で歯を矯正します。
マウスピース矯正は、透明な取り外し可能なプラスチック製のマウスピースを使用し、段階的に歯を動かしていきます。
ではそれぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、最も伝統的な歯科矯正治療法の一つです。
この方法では、金属製またはセラミック製のブラケットを矯正する歯に接着し、金属のワイヤーを通してブラケットを連結します。
ワイヤーを調整することで歯に適切な圧力をかけ、徐々に歯を目指す位置に移動させることになります。
ワイヤー矯正は、広範囲の歯並びの問題に対応可能で、特に複雑な症例に対して効果的です。
治療期間は個人差がありますが、一般的には数ヶ月から時には数年かかることが多いです。
裏側矯正
裏側矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に取り付ける方法です。
この治療法の最大の特徴は、矯正装置が外から見えにくいことにあります。
裏側矯正は見た目を気にする成人や社会人の人に人気の矯正方法で、通常のワイヤー矯正と同様に幅広い歯並びの問題に対応可能です。
デメリットとしては、装置が舌に触れてしまうため、最初は発音に影響が出ることがあげられます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、取り外し可能な透明なプラスチック製のマウスピースを使用し、マウスピースの代表的なものには「インビザライン」というものがあります。
患者さんの歯型に基づいて作られたマウスピースを一定期間ごとに交換し、段階的に歯を理想の位置に移動させます。
目立たない見た目と、取り外し可能な利便性が特徴で、日常生活における見た目の影響が少ないため、成人の矯正に適していると言えるでしょう。
軽度から中等度の歯並びの問題に効果的ですが、重度の症例には適さない場合もあります
まとめ
今回は、「正しい歯並び」とは何かについて解説してきました。
理想的な歯並びは、上下の歯が適切に噛み合わせられること、歯が整然と並んでいること、均等な噛み合わせがあること、そして顎の位置がバランス良く整っていることが特徴となります。
この歯並びが崩れてしまうと、見た目の美的な問題が気になったり、あるいは衛生面の悪化によって口腔内の病気が起こることもあるため注意してください。
歯並びが正しくない場合は、歯科矯正などによって歯並びを治療することも可能です。
矯正の種類はいくつかあるため、それぞれの特徴をよく理解し、担当医と相談した上で自分に最適な方法を選ぶと良いでしょう。
監修:理事長 森本 哲郎