歯科矯正前や矯正中に親知らずが生えてしまった時にどうしたらいいのか?
- 2024年3月24日
- コラム
歯科矯正前や矯正中に親知らずが生えてしまった時にどうしたらいいのか?
親知らずは、多くの人にとって経験するまであまり馴染みのないものです。
ですから、親知らずについての知識や、親知らずにどう対処するべきかについて曖昧な部分が多いかも知れません。
さらに、もしいま歯科矯正を検討しているとしたら、親知らずのことがより一層菌あることでしょう。
そこで今回は、親知らずに関する基本的な情報から歯科矯正との関連性、そして適切な処置の必要性について詳しく解説していきます。
口内の健康を保つためには、親知らずと矯正治療の関係に関する正しい知識と適切な処置が不可欠です。
それでは、親知らずと歯科矯正について深く掘り下げて見ていきましょう。
親知らずとは?概要と生える理由
まずは話の基本となる「親知らずとは一体どんなものなのか」についてみていきましょう。
親知らずとは一体どんな歯?
親知らずというものは名前が親しみやすいだけに馴染みのある言葉かもしれませんが、実際には私たちの口の中に生えてしまうとちょっと不便な存在かもしれません。
では、親知らずとは一体何でしょうか?
親知らずは「第三大臼歯」と呼ばれることがあります。
これは通常、生える順番が他の歯よりも遅く、最後に生えるからそう呼ばれるのです。
親知らずは上顎と下顎にそれぞれ2本ずつ、計4本生えることがあります。
そして、この歯は他の歯とは少し違って、時には特別なケアや処置が必要になることがあるのです。
親知らずはなぜ生える?
親知らずがなぜ生えるのか、その理由はひとつではなく、いくつかの要因が関わっています。
まず第一に考えられるのは、「人間の進化」です。
私たちの祖先は、食物を咀嚼(そしゃく)するためにより大きな顎を持っていました。そのため、多くの歯を収容可能な大きな口腔が必要でした。
しかし、現代の人間の顎は、進化の影響で小さくなり、親知らずはスペースを持つのが難しくなって、他の歯と競合してしまうのです。
あるいは、親知らずの生え方や生えるタイミングは、個々の遺伝子の影響を受けることがあります。つまり、親知らずが生えるかどうかや、生える場所、生える角度などは、遺伝的な要因によって決定されることもあります。
環境的要因も、親知らずの生える影響を受ける可能性があります。
口腔内の空間が他の歯などによって制限される場合、親知らずの生え方に影響が出ることがあります。口腔内の形状や歯の配置も、親知らずの生え方に影響を与えます。
親知らずが生える理由は複雑であり、個々の人によって異なります。しかし、進化の影響や遺伝的、環境的要因が組み合わさって、親知らずが生えることがあり、周囲の歯や組織に影響を与えることがあるのです。
親知らずは何歳くらいで生えやすい?
親知らずが生えるタイミングは個人によって異なりますが、一般的には10代後半から20代にかけて生え始めることが多くなっています。
ただしこれも個人差があり、親知らずが生える時期や順番は口腔の状態によって異なります。一部の人はもっと早い時期に生え始めることもありますし、30歳を過ぎてから生え始めることもあります。
親知らずが生える時期は一般的に第二大臼歯や第一大臼歯が生えるのと同じくらいですが、生え始める順番やタイミングは個々の歯の状態や体の成長によって異なります。
親知らずにはどんなデメリットがある?
さてそんな親知らずは、一体どんな問題につながる可能性があるのでしょうか。
親知らずの弊害には何がある?
親知らずには、生え方や口内の状態によってさまざまなデメリットがあります。
まず注意したいのが、親知らずが他の歯や歯茎に圧迫されて埋没してしまうことです。これは痛みや腫れを引き起こし、口の中の他の歯に影響を与える可能性があります。
さらに親知らずが周囲の歯に圧力をかけることで、歯列の乱れや歯の移動を引き起こす可能性があります。その場合、歯の隙間や歯並びの乱れが生じることがあります。
親知らずが歯茎の下に部分的に生える場合、周囲の組織が炎症を起こしてしまうかもしれません。これによって親知らずがしばしば痛みや腫れを引き起こし、感染のリスクを高めます。
親知らず周辺の組織に食べカスや細菌がたまりやすく、感染が発生する可能性があります。細菌によって歯茎や顎の周囲の組織に炎症や感染が生じるリスクがあります。
下歯槽神経麻痺とはどんなもの?
そのほか、親知らずは、下歯槽神経麻痺の原因になる可能性があります。
下歯槽神経は下顎の感覚を制御する神経で、下歯槽神経麻痺はこの神経の機能障害のことです。
親知らずが生えてしまうと下顎の神経や血管を圧迫してしまい、その結果下歯槽神経麻痺が引き起こされることがあります。
下歯槽神経麻痺の症状には、顎の感覚の低下や異常感覚、舌のしびれ、または顔面の筋肉の動きの制限などがあげられ、これらの症状は患者さんに悪影響を与えることがあります。
親知らずはすぐに抜くべき?
親知らずをすぐに抜くべきかどうかは、個々の状況によって異なるといえるでしょう。
親知らずが口内に問題を引き起こしている場合や、将来的に問題が起こる可能性がある場合には、抜歯を検討すべきでしょう。
さらに親知らずが周囲の歯や組織に圧迫をかけて痛みや不快感を引き起こしている場合も同様です。
親知らずが歯茎の下に埋もれたり、感染や炎症を引き起こしている場合も、抜歯が必要な場合があります。
ただし、もし 親知らずの周辺に十分なスペースがあり、周囲の歯や組織に影響を与えていない場合、抜歯する必要はありません。
あるいは親知らずが生え方や位置に問題がなく、口腔内の他の組織に影響を与えていない場合も、通常は抜歯しなくても大丈夫です。
歯科矯正の際に親知らずはどうしたらよい?
ここまでは一般的な親知らずに関する話をしてきました。
ではもし歯科矯正を検討しているときに、あるいは矯正期間中に親知らずが生えてきた場合、これは必ず抜くべきなのでしょうか。
歯科矯正中に親知らずがある際のデメリット
まずは歯科矯正を受ける際に親知らずがある場合の、デメリットについて考えてみましょう。
親知らずが生えることで周囲の歯に圧力をかけてしまうと、歯列の乱れや歯の移動が生じる可能性があります。
その結果、矯正治療の進行が妨げられてしまうことがあります。
あるいは歯科矯正装置と親知らずが干渉することがあり、そうなると装置やワイヤーが親知らずに当たることで不快感や痛みが生じてしまうかも知れません。
親知らずが生え方に問題がある場合、周囲の歯や歯茎に食べカスがたまりやすくなり、口腔内の清掃が困難になることがあります。これにより、歯周病やその他の口腔疾患のリスクが増加し、矯正に悪影響を及ぼします。
親知らずが歯茎の下に埋もれたり、十分なスペースがない場合、こrもまた炎症や感染が生じるリスクが高まります。歯科矯正中にこのような状況が起きると、治療の妨げになる可能性があります。
歯科矯正中に親知らずは抜くべき?
歯科矯正中に親知らずを抜くべきかどうかは、症状や状況によって異なります。
親知らずの生え方や位置によっては、矯正治療の進行を妨げる可能性があり、親知らずが他の歯に圧迫をかけて歯列の乱れを引き起こしたり、矯正装置と干渉して治療効果が低下する場合があります。
このような場合、親知らずの抜歯を検討します。
親知らずが周囲の組織に影響を与えて症状を引き起こしたり、親知らずが歯茎の下に埋もれている場合、不適切な位置に生えている場合も炎症や感染が起こる可能性が高まります。
これにより、痛みや腫れ、歯茎の膿んだり腫れたりするなどの症状が生じ、炎症や感染が慢性化すると、さらなる合併症や口腔内の健康への影響が懸念されるため、矯正中であればなおさら親知らずの抜歯が必要となります。
親知らずを抜かない方が良いケースとは?
親知らずを抜かない方が良いケースもあります。
たとえば親知らずが正常な位置にあり、周囲の歯や組織に影響を与えていない場合、抜歯する必要性は低くなります。
親知らずが生え方や位置に問題がない場合や、親知らずが生えても十分なスペースがある場合も、抜歯する必要はありません。
なぜなら親知らずが完全に生えている場合、そのまま残しておくことで、口腔内の機能や健康に支障がない場合もあるからです。
さらに親知らずを抜かない方が良いケースとして、抜歯に伴うリスクや合併症を考慮する必要があります。
抜歯によるリスク、術後の痛みや腫れ、感染のリスクなどがあり、これらのリスクを避けるために、親知らずを抜かない方が良い場合もあります。
歯科矯正は親知らず対策になる?
では逆に、もし歯科矯正をすれば親知らず対策になるかどうかについてもみていきましょう。
歯科矯正によって、歯列の配置や噛み合いが改善されります。
歯が正しい位置に移動し、適切な咬合関係が確立されることで、口腔内のスペースが最適化され、親知らずが生えるスペースが確保されれば、親知らずが周囲の歯や組織に圧迫をかける可能性が低くなります。
さらに。歯科矯正によって歯並びが改善されると、親知らずが正しい位置に生えやすくなる場合もあります。
ただし基本的には歯科矯正治療によって親知らずの生え方をコントロールすることはできません。
そのため、歯科矯正治療が親知らずの生え方や位置に直接的な影響を与えるかどうかは個々の状況によって異なります。
まとめ
口内の健康を保つためには、親知らずに関する正しい知識と適切な処置が欠かせません。
今回紹介した矯正治療と親知らずの関係について理解したうえで、定期的な歯科医の診察や、問題が生じた際の適切な処置を行い、より確かな矯正治療が可能となるはずです。
もしまだ治療中母親知らずなどに関してさらに不安がる場合は、歯科医師に相談した上で治療をはじめるようにすれば良いでしょう。
監修:理事長 森本 哲郎