歯周病は予防が肝心!正しい予防法5つを解説
- 2024年4月18日
- コラム
「歯周病には歯磨きが効果的?」
「最近、歯ぐきから出血するな…」
「歯周病って予防できるの?」
歯周病のお悩みや、歯周病予防に関して疑問を抱えている人がいらっしゃるでしょう。
歯周病は歯と歯の間に付着した細菌のかたまりが、歯ぐきに炎症を起こす病気です。
将来的に歯を失う原因の1位である歯周病は、正しい予防と診断、適切な治療が必要です。
本コラムでは歯周病の病態や原因とあわせて、正しい予防法を5つ解説します。ご自身の生活のなかで取り入れられるものから実践し、年齢を重ねても健康な歯ぐきを維持しましょう。
歯周病は細菌感染による炎症性の病気
歯周病とは、細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患の総称です。
歯ぐき(歯肉)の炎症や歯を支える骨などが溶けてしまう病気で、進行度合いによって歯肉炎、歯周炎と分類されます。歯周病は歯垢(しこう)と呼ばれる生きた細菌のかたまりの増殖で発生し、細菌は口のなかでバイオフィルムという薄い膜を作り、歯にはりついています。
健康的な歯肉と、歯周病の進行過程の特徴は以下のとおりです。
特徴 |
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健康な歯肉 |
・歯肉は薄いピンク色で引き締まっている ・歯と歯の間に歯肉が入り込んで弾力がある ・ブラッシングでは歯肉から出血しない |
歯肉炎 |
・歯肉は赤色で、歯と歯の間の歯肉が丸くふくらんでいる ・ブラッシングで歯肉から出血する ・腫れた歯と歯肉との間に歯垢が溜まり悪化する |
歯周炎 |
・歯肉は赤紫色で、歯と接している歯肉が更に腫れる ・ブラッシングで歯肉から出血や膿がでる ・歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まる ・歯肉が退縮して歯が長く見える ・歯周ポケットが深くなり骨(歯槽骨)が溶ける |
また令和3年の厚生労働省のデータによると、歯周病が原因で歯を抜くに至ったケースは15歳未満からみられ、40〜44歳で約24%、55歳以降の各年齢層においては約半数を占めます。歯周病は将来的に歯を失う原因になりうるのです。
歯周病予防は歯垢をためないのが重要で、日々の丁寧な歯磨きや歯科での歯石除去が有効です。
歯周病を引き起こす3つの原因
歯周病の原因は大きく下記の3つに分類されます。
細菌要因 |
歯垢(プラーク)の付着による細菌感染によるもの |
環境要因 |
喫煙や食事などの生活習慣、噛み合わせなどによるもの |
生体要因 |
持病や遺伝によるもの |
細菌要因としては、プラーク(歯垢)と呼ばれる生きた細菌のかたまりが挙げられます。
プラークはバイオフィルムとも呼ばれ、1mgの中に1億を超える細菌が棲みついており、粘着性があるためうがい程度では除去できません。プラークは抗菌薬が効きにくい構造で、産生する毒素が歯ぐきの腫れや出血、膿の排出や歯の周りの骨を溶かす原因となります。
またプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まったものを歯石と呼び、歯磨きで取り除くのは難しく、歯科医院での歯石除去が必要です。
環境要因には喫煙や食事・睡眠などの生活習慣が含まれます。歯に合っていない被せ物や嚙み合わせ、口呼吸で口腔内が乾燥しやすい人は口腔内が炎症を起こしやすい状態です。
生体因子には人種や年齢に加え、持病の有無や遺伝による身体の免疫機能の違いなどが挙げられます。例えば持病に糖尿病がある方は、健康な人よりも歯周病になりやすいことが分かっています。
歯周病の予防法5選
歯周病の予防法は、下記の5つです。
1.毎日の丁寧な歯磨き
2.定期的な歯科受診で歯石除去
3.禁煙
4.免疫を高めるための生活習慣
5.全身の健康管理
厚労省の実態調査によると30代以上の3人に2人が歯周病と診断される時代です。歯周病は年数をかけてゆっくり進行するため、少なくとも10代後半〜20代からの予防ケアが必要です。
1.毎日の丁寧な歯みがき
歯磨きは歯周病予防の基本です。
歯周病の原因となるプラーク(歯垢)を増やさないようにしっかり取り除きましょう。
プラークは歯周ポケットと呼ばれる歯の周りの溝が深くなってできた隙間に生息しています。そのため歯の表面だけでなく、歯周ポケットを意識した磨き方が重要です。
歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度であて、5mm程度に細かく動かしながら軽い力でみがきます。歯ブラシが届きにくい部分は、歯間ブラシやデンタルフロスも併用しながらすみずみまで丁寧に磨きましょう。
また使用する歯ブラシの選び方も重要です。すみずみまで毛先が当たるようヘッドが小さく、歯垢を落としやすいよう毛先はある程度の固さがありつつ、歯ぐきを傷つけないものがおすすめです。明らかに毛先が開いてきた歯ブラシは交換し、見た目に変化がなくてもブラシの弾力が劣るため、1ヶ月に1度の交換が推奨されています。
歯磨き粉については、成分を確認し歯周病の原因菌を効果的に殺菌する薬用成分や抗炎症作用が配合されたものを選ぶのもいいでしょう。ただし歯磨き粉の成分が明らかに歯周病に対する治療効果があるという訳ではなく、あくまで補助的な効果と考えましょう。最も重要なのは、殺菌成分でなく原因となるプラークを取り除く丁寧なブラッシングです。
炎症が歯ぐきに限られている歯肉炎の状態なら、プラークを取り除くセルフケアで健康な状態に戻せます。
歯周病予防におすすめの歯磨き粉の詳細については、過去のコラムをご覧ください。
2.定期的な歯科受診で歯石除去
歯ブラシが届きにくい場所は時間の経過とともにプラークが歯石に変化し、歯みがきでは取り除けません。また歯周ポケットが深くなると歯ブラシの毛先が届かず、通常の歯磨きでは限界があるため、定期的に歯科医院で歯石除去しましょう。
他にも定期受診のメリットは、虫歯や歯周病を初期の段階で発見できることです。初期の治療であれば痛みも少なく治療にかかる時間とお金が節約できます。
3.禁煙
タバコに含まれるニコチンは歯周病をひき起こす細菌の発育を促すことが分かっています。喫煙は血流や全身の免疫力を低下させ歯周病菌に感染するリスクを高めるため、喫煙者は歯周病になりやすいと考えられています。また喫煙により歯ぐきの色が悪くなりヤニも付着するため、歯周病に気づきにくい点もデメリットです。
4.免疫を高めるための生活習慣(食事/睡眠/ストレスケア)
口腔内には300種類以上もの細菌が存在し、バランスをとりながら共生しています。体の免疫機能が弱まると細菌のバランスが崩れ、歯周病菌が優位になるため歯周病が進行します。体の免疫機能を維持するためには、食事や睡眠、ストレスケアなどの生活習慣を整えることが非常に重要です。
まず食生活で気をつけたいのは、食事内容と食べ方です。
バランスのとれた食事はもちろん、抗酸化作用のあるビタミンCや血行を促すビタミンEを含む食品などを積極的にとりましょう。糖質の過剰摂取は血糖値を上昇させ、歯周病悪化のリスク要因である糖尿病につながります。また長時間のだらだら食べや間食が多いと、飲食物に含まれる糖分をエサとして口の中の細菌が増殖し、歯周病の原因となる歯垢が作られます。
また唾液には口腔内をきれいにする自浄作用がありますが、噛む回数が少ないと唾液の分泌量は減ります。就寝中も唾液の分泌量が減少するため、寝る直前の食事や間食も避けた方がよいでしょう。睡眠中は副交感神経が優位になり心も体もリラックス状態になるため、質の良い睡眠は免疫細胞が活発になります。
ストレスも歯周病との関連があり、一般的に強いストレスが加わると、自律神経のバランスが崩れて免疫力が低下したり、唾液の分泌が減ったりすると言われています。また歯ぎしりや食いしばりは、強いストレスや過度の飲酒などで眠りが浅くなると助長されます。歯ぎしりが歯周病の直接的な原因ではありませんが、歯ぎしりによる歯ぐきへの負担が歯周病の悪化要因になるため、ストレスケアは重要な予防策です。
5.全身の健康管理
歯周病は口腔内だけでなく、全身の病気と深い関わりがあります。
近年のさまざまな研究では、肥満や糖尿病の人は歯周病を発症しやすく重症化しやすいといわれています。また歯周病菌が血管に入ると血糖値をコントロールするインスリンの働きが悪くなり糖尿病を悪化させるのです。
他にも歯周病は骨粗しょう症や誤嚥性肺炎・動脈硬化とも関連性があるため、全身の健康管理と歯周病予防はそれぞれに効果を発揮します。
まとめ|歯周病予防には歯垢をためない歯磨きが最重要
歯周病は細菌感染によって歯ぐきの炎症や歯を支える骨が溶け、将来的に歯を失う原因になる病気の総称です。病態の進行度合いによって、歯肉炎・歯周病に分類されます。
歯周病の原因は主に細菌要因・環境要因・生体要因の3つです。なかでも細菌要因である、歯垢(プラーク)の付着による細菌感染を防ぐために、毎日の丁寧な歯磨きは重要な予防策のひとつです。
歯垢は歯と歯ぐきの隙間にたまりやすいため、歯の表面だけでなく、隙間を意識して磨きましょう。歯ブラシで届かない歯と歯の間などは、歯間ブラシやフロスの活用が効果的です。
また歯周病予防の歯磨き粉は、配合成分自体に治療効果はなく、あくまでも補助的な役割で使用し、一番はしっかり歯垢をブラッシングで除去するのが大切です。
喫煙や食事などの生活習慣、噛み合わせなどによる環境要因の予防のためには、食事内容や食べ方、禁煙、良質な睡眠とストレスケアがあります。歯周病は体の免疫機能と関連性があるため、免疫機能を高める生活習慣が予防につながります。また年齢や遺伝、持病の有無などの生体要因の予防としては全身の健康管理が大切です。特に肥満や糖尿病と歯周病は密接に関連性があることがわかっています。
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監修:理事長 森本 哲郎