取り外さない部分入れ歯はどんなときに使えるのか?費用や注意点を解説
- 2024年5月12日
- コラム
入れ歯と聞くと、そのほとんどは「取り外しながら使う」というイメージがあるはずです。
しかし実は一部の入れ歯は取り外さなくても使えるタイプのものもあるのです。
では果たしてそんな取り外さない入れ歯というのは、一体どんなタイプの入れ歯なのでしょうか。
さらにそもそもなぜ入れ歯を取り外して使うのか、取り外さないことでどんなメリットデメリットがあるか、そして取り外さない入れ歯を使うときにどんな注意点があるのかについて見ていきましょう。
なぜ入れ歯は一般的に取り外さなければならないのか
まず普通の入れ歯はなぜ取り外す必要があるのかについて、説明していきます。
清潔さを保つため
入れ歯を毎日取り外して洗浄することで、食べ物の残りや歯垢を除去し、口腔内の衛生を保つことができます。
通常一般的な入れ歯は、細菌やカビの繁殖を防ぐために適切な洗浄が必要であり、これが口腔全体の健康を保つ重要なポイントとなります。
そのため入れ歯を施錠するために取り外し可能とすることで、口臭や感染症のリスクを低減します。
歯茎の健康を維持するため
入れ歯を長時間装着したままにしていると、歯茎に負担がかかり歯茎の血流が悪くなります。
歯茎の血流が悪い状態が長く続くと、歯茎が炎症を起こしたり、口内炎が発生するリスクが高まってしまいます。
ですから夜間に入れ歯を外して歯茎を休ませることで、血流を改善して歯茎の健康を維持するのです。
入れ歯の寿命を延ばすため
定期的に入れ歯を取り外し、適切なケアを行うことで、入れ歯自体の劣化を防ぎ、その寿命を延ばすことができます。
これは入れ歯を入れている人自体に対するケアと言うよりは、入れ歯自体のケアのためとになります。
定期的に入れ歯を外し清潔に保つことで、入れ歯の素材の劣化や破損を防ぐことができ、結果的に交換や修理の頻度を減らすことができます。
取り外さない入れ歯の種類と特徴
このように一般的な入れ歯は人体と入れ歯自体のケアのために、夜間など歯を使わないときに外しておくのが一般的です。
ただし入れ歯の中には、取り外す必要のないタイプのものもあります。
とは言っても、広い意味で入れ歯とジャンル分けされていますが、これらの取り外さないタイプの入れ歯は、一般的にイメージされている入れ歯とは少し異なるといえるかも知れません。
では一体、取り外さない入れ歯にはどのようなタイプのものがあるのでしょうか。
インプラント支持の固定式入れ歯
取り外さない入れ歯としての代表例が、いわゆるインプラントと呼ばれるタイプの治療法です。
インプラントとは、失った歯の代わりに顎の骨に埋め込む人工歯根のことで通常、チタンなどの骨と結合しやすい素材で作られています。
インプラントは、顎の骨に埋め込まれることで、自然の歯根のように機能し、このインプラントを支えにして取り付ける入れ歯が、インプラント支持の固定式入れ歯となります。
インプラント支持の固定式入れ歯は、顎の骨に埋め込まれた複数のインプラントに連結されているため、非常に安定しています。
このタイプの入れ歯は、取り外しが必要ないため、まるで自分の歯のように感じられる点が大きな特徴で、食事や会話の際に入れ歯が動くことがなく、快適に使用できます。
この治療法は、特に全ての歯を失った場合に有効です。インプラントによる支えがあるため、従来の入れ歯よりも強力な噛み合わせ力を提供します。
骨が保持されることで、顔の形が変わるのを防ぎ、若々しい外見を保つことも可能となります。
固定ブリッジ
固定ブリッジは、取り外さない入れ歯の一種であり、歯の代わりに隣接する健康な歯を支えにして人工の歯を固定する方法です
主に金属やセラミックで作られ、非常に自然な見た目と感触を提供します。
固定ブリッジは、通常の入れ歯とは異なり、取り外す必要がないため、毎日のケアが簡単で、使用中に動くことがなく、非常に安定しています。
固定ブリッジの設置には、失った歯の両側にある健康な歯を削って支台歯とし、これらの歯に被せ物を装着します。
このクラウンの間に人工歯ポンティックが連結され、失った歯の空間を埋めます。
固定ブリッジは、部分的な歯の欠損に対する効果的な治療法であり、周囲の歯に自然に溶け込むようにデザインされているので、見た目が非常に自然で、自分の歯のような感覚が得られます。
一部の特殊な矯正装置
特定の矯正装置は、歯列の矯正を行う際に取り外しが不要なタイプがあります。
これらは長期間装着することを前提として設計されており、日常の活動に影響を与えずに矯正効果を発揮します。
アタッチメント付き入れ歯
アタッチメント付き入れ歯は、特殊な留め具や磁石を使用して固定されるため、取り外しの頻度を減らすことができます。
これは、部分的な歯の欠損に対応する場合に効果的です。安定性が高く、使用感も良好です。
取り外さない部分入れ歯のメリット
このように取り外さない入れ歯というのは意外といろいろな種類があり、それぞれの特徴を活かして使い分けることになります。
ではそんな取り外さない入れ歯というのは、どんな利点を持っているのでしょうか。
高い安定性と固定性
まずインプラント指示の入れ歯の場合は、インプラントで固定されるため、従来の部分入れ歯に比べて非常に安定しています。
ですから食事や会話の際に動くことがなく、快適に使用可能です。
この安定性は、特に社交的な場面での自信を高める要素となります。
自然な見た目と感覚
取り外さない入れ歯は、見た目が自然で、実際の歯に近い感覚を提供します。これにより、自分の歯のように感じられ、食事や会話が自然に行える点が大きなメリットです。
周囲の歯に負担をかけない
インプラント支持の入れ歯は、周囲の健康な歯に負担をかけることなく、自立して機能します。これにより、残っている歯の健康を長期的に保つことができます。
耐久性に優れる
インプラントなどの取り外さない入れ歯は、材料や固定方法が優れていることがほとんどのため、耐久性が高いのもメリットとなります。適切なケアを行うことで、長期間にわたって使用可能です。
骨のカタチを維持できる
インプラントは顎の骨に直接結合するため、骨の吸収を防ぎ、骨量を維持するのに役立ちます。これにより、顔の形が変わるのを防ぎ、若々しい外見を保つことができます。
取り外さない部分入れ歯のデメリット
では逆に、取り外さない入れ歯のデメリットについて見ていきましょう。
とは言え当然ながらデメリットというのはそれぞれの種類によって異なる現象となりますので、主にここではインプラントについてのデメリットを紹介していきます。
コストが高い
インプラント手術が必要なため、初期費用が高くなります。
さらにインプラント自体の費用や手術後のケアにも費用がかかります。
保険適用外のケースがほとんどとなるため、予算面での考慮が必要です。
手術が必要
インプラントを埋め込むためには、外科手術が必要です。
そうなると当然、手術に伴うリスクや術後の回復期間が発生します。
それにくわえ、全身麻酔や局所麻酔を使用するため、患者の健康状態や手術の適応を慎重に判断する必要があります。
治療期間が長い
インプラント手術から入れ歯の装着までの治療期間は、インプラントが骨と結合するのを待つ期間が含まれるため、数ヶ月から場合によっては一年以上かかることがあります。
手っ取り早く解決したいという場合、治療期間の長さがデメリットとなるはずです。
適応症が限られる
全ての患者さんがインプラント治療を受けられるわけではありません。
なぜなら骨の量や質、全身の健康状態によっては、インプラントが適応できない場合があるからです。
インプラント治療の条件を満たさない場合、他の治療法を検討しなければなりません。
取り外さない部分入れ歯を選ぶ際のポイント
では最後に取り外さない部分入れ歯を選ぶ際には、どんなことに注意するべきかみていきましょう。
骨の量と質
インプラント支持の部分入れ歯を選ぶ際に最も重要な要素の一つは、顎の骨の量と質です。
インプラントがしっかりと固定されるためには、十分な骨量が必要です。
骨が不足している場合、インプラントを支えるのに十分な安定性を得ることができません。
骨の質も重要で、密度や強度が十分であることが求められます。骨質が不十分だと、インプラントが固定されにくく、治療の成功率が低下します。
歯茎の健康
健康な歯茎がインプラント治療の成功にとって不可欠です。
歯周病や炎症などの問題がある場合、まずそれらの問題を治療する必要があります。
歯茎が健康でないと、インプラントの周囲に炎症が発生し、インプラントが失敗するリスクが高まってしまいます。
治療費用
インプラント手術は高額な治療となるため、事前に予算を確認し、治療費用に対応できるかどうかを検討することが重要です。
インプラントの費用には、手術費用、インプラント自体の費用、術後のケア費用などが含まれ、骨移植や追加の治療が必要な場合、それらの費用も考慮しなければなりません。
保険の適用
インプラント治療は、保険の適用範囲が限られている場合が多いため、事前に保険の適用範囲を確認することが必要です。
また、民間の歯科保険や補助金制度が利用できるかどうかも検討することが推奨されます。
インプラント以外の外さない入れ歯の場合は、ケースバイケースとなりますので、随時歯科医としっかり相談してください。
まとめ
一般的に入れ歯というのは夜間に取り外し洗浄をするというルーチンが必要で、手間がかかるものというイメージがあるかも知れません。
ただしインプラントの場合はしっかりと固定され、血流の問題なども起こりにくいので、取り外す必要がありません。
さらにインプラント以外にも取り外す必要のない入れ歯もありますので、症例に応じてうまく取り入れることで、入れ歯の手間が軽減できるかも知れませんので、ぜひ歯科医に相談してみてください。
監修:理事長 森本 哲郎