アデノイド顔貌は受け口(反対咬合)になる原因のひとつ|治療や予防方法も解説
- 2024年9月21日
- コラム
「アデノイド顔貌だと何が問題?」
「アデノイド顔貌は受け口の原因になるの?」
「アデノイド顔貌と受け口は治療できるの?」などアデノイド顔貌と受け口の関連性について疑問をもっている方もいるでしょう。
アデノイドとは鼻の奥の突きあたりで喉の間にある「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」と呼ばれる組織です。
アデノイド顔貌とはアデノイドが肥大したために現れる顔の特性で、丸みをおびた輪郭に口元が前につきだしているのが特徴です。
アデノイドが肥大すると鼻呼吸が難しく、口呼吸になることでいびきや口腔内のトラブル、歯並びにも影響します。
本コラムではアデノイド顔貌の特徴や放置するデメリット、受け口との関連性についても解説します。
アデノイド顔貌や関連する受け口の治療法、幼少期であれば予防方法についても解説しますので、ご自身に該当するかもしれないと思う方は参考にしてみてください。
アデノイド顔貌の特徴
アデノイドとは鼻の奥の突きあたりで喉の間にある「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」と呼ばれる組織で、アデノイド顔貌とは咽頭扁桃が肥大した人に現れる特徴的な顔貌です。
具体的には、次のような特徴があります。
・口元が前に出ている
・上あごより下あごが引っ込んでいる
・口が空いている
・二重顎になりやすい
・顎と首の境目がわかりにくい
・丸みを帯びた顔になる
アデノイドの肥大により口呼吸になりやすいため顔の筋肉が使いづらく、下顎が後退することで顎と首の境目がわかりにくい丸みを帯びた顔つきになります。
また口元が前に出ているのも特徴的で、横から見た際に美しい横顔の指標とされるEラインが崩れやすくなります。
アデノイド顔貌の原因のひとつは「口呼吸」
アデノイドは鼻の奥と喉の間の上咽頭にあるため、口を開けても正面からは見えません。
2歳頃から大きくなり、6歳頃をピークにその後は自然と10歳頃までに小さくなっていくため、特に日常生活に支障がない場合は経過をみます。
しかしアデノイド肥大が原因で次のような症状を繰り返したり、日常生活に支障がある場合は治療を検討します。
・鼻づまり
・口呼吸
・滲出性中耳炎
・睡眠時無呼吸症候群やいびき
顔貌の変化はアデノイド肥大のみが直接的な原因ではありません。
アデノイド肥大に伴う「口呼吸」が原因で、成長とともに顔貌に変化が現れはじめます。
アデノイドは鼻腔と繋がっているため、肥大化により鼻呼吸がしづらく自然に口呼吸になります。
口呼吸は下顎の筋肉の成長を妨げ、後退したような顎や丸みを帯びた顔貌の原因となる以外にも、歯並びや嚙み合わせにも影響します。
口呼吸は受け口(反対咬合)や口があいたままの開咬、ガタガタの歯並び(叢生)の原因にもなります。
アデノイド顔貌を放置する4つのデメリット
通常アデノイドは成長とともに縮小していきますが、肥大したまま口呼吸になることで徐々にアデノイド顔貌の特徴が現れます。
そのためアデノイド顔貌を放置するデメリットは、次の4つです。
1.歯並びに影響する
2.風邪をひきやすくなる
3.口臭がきつくなり虫歯や歯周病のリスクがあがる
4.いびきや無呼吸症候群のリスクがあがる
それぞれの影響について詳しく解説します。
1. 歯並びに影響する
歯並びに影響を及ぼす要因として口呼吸と舌の位置が密接に関わっています。
口呼吸によって舌の位置が正しい位置からずれてしまうと、次のような不正咬合を引き起こします。
・上顎前突:上顎が狭くなり、下顎が後方へずれてしまう
・反対咬合(受け口):下顎が前へ突き出してしまう
口呼吸によって舌の位置に癖がつくと、発音や嚥下にも影響します。
また奥歯でしっかりと食べ物を噛めず、顎の骨が発達しにくいため顎が狭くなることで歯並びに影響を与えます。
口呼吸で常に口が開いていると、唇を閉じた際の外側からの抑制がないため歯や顎が前方へ突出しやすく、余計に唇を閉じにくく悪循環です。
2. 風邪をひきやすくなる
アデノイドの肥大により鼻呼吸しづらく口呼吸になると、風邪をひきやすいのがデメリットです。
鼻呼吸の場合、鼻から入ってきた空気は鼻腔を通過する際に、適切な温度と湿度に調整されるため肺の負担を軽減します。
また鼻毛はフィルターの役目があり、外部からの花粉やホコリ・ウイルスなどの侵入を防いでくれます。
しかし口呼吸では外気がそのまま取り込まれるため、口の中や気道が乾燥しやすく異物やウイルスも直接侵入するため風邪にもかかりやすくなります。
3. 口臭がきつくなり歯周病や虫歯のリスクがあがる
唾液は口のなかに残っている食べかすや外から入った異物、雑菌や細菌などを洗い流す役割があり、口腔内で細菌の増殖を防ぐ抗菌作用があります。
しかし口呼吸になると口腔内が乾燥し、食べかすや細菌が洗い流されずにとどまるため口臭の原因や虫歯・歯周病のリスクが高まります。
また唾液の成分に歯の再石灰化を促す作用があるため、唾液が潤うと虫歯の予防効果がありますが乾燥していると予防効果がありません。
口腔内の乾燥対策やこまめなケアも必要ですが、根本的解決には口呼吸から鼻呼吸に変えるのをおすすめします。
4. いびきや無呼吸症候群のリスクがあがる
アデノイドが大きくなると鼻からの空気の通りが悪くなり、鼻呼吸がしづらく口呼吸になるため、睡眠時にいびきをかいたり呼吸が止まったりしてしまいます。
睡眠時にうまく呼吸が出来ないと、睡眠の質が低下し日中の眠気や疲労感、日常生活への影響や心血管疾患のリスクにつながります。
特に心不全や心筋梗塞など危険度の高い疾患との関連性が指摘されているため、早めの対処・治療が必要です。
特に子どものいびきや睡眠時無呼吸症候群は、成長発達にも大きく関わります。
アデノイド顔貌は受け口になる原因のひとつ
アデノイド肥大による口呼吸が及ぼす影響について解説しましたが、特に受け口(反対咬合)になる原因や、受け口を放置するデメリットについて解説します。
正しい歯並びが決まる要素のひとつに「舌の位置」は重要です。
通常、安静時に舌は上あごの内側に接触しており、顎への舌の力と頬の力が調和して上顎の正しい歯列が保たれます。
しかし口呼吸の場合は舌が下顎の内側にはりつき、舌の力により下顎の歯列が広がり逆に舌の支えをなくした上顎の歯列は頬の圧力で小さくなります。
そうすると上下の歯列の大きさがあわなくなり、受け口や開咬になりやすいのです。
受け口は噛み合わせが悪いため咀嚼しにくく、顎関節や胃に負担がかかるほか、見た目の悩みや発生にも影響します。
アデノイド顔貌や受け口の治療方法|大人の場合
大人のアデノイド顔貌や受け口を治療するには、主に次の2つの方法があります。
・歯列矯正
・外科手術
大人の場合はすでに顎の成長が完了しているため、歯並びを矯正する場合は歯科矯正が適しています。
軽度の受け口であればマウスピース矯正で改善が見込めますが、中度・重度の受け口はワイヤー矯正が適用になることが多い。
また歯列だけでなく顎の骨に原因のある受け口は、歯科矯正と外科手術を併用する外科的矯正治療が行われます。
アデノイド顔貌や受け口の予防・治療方法|子どもの場合
子どもの治療は歯列矯正だけでなく顎の成長発達に合わせた方法が可能ですが、治療開始時期が重要です。
顎の成長発達は個人差があるものの、一般的に上顎の成長ピークは男女ともに10歳前後といわれているため、4〜6歳頃までに開始することが望ましいでしょう。
顎の成長に合わせた具体的な予防・治療方法には、下記のような方法があります。
・口腔筋機能療法(MTF)
・トレーニング矯正装置
・咬合(こうごう)育形成
口腔筋機能療法(MFT)は口周りの筋肉の使い方をトレーニングすることで、歯並びの悪化を防ぎ、舌の正しい位置や呼吸法が習得できます。
個人の状態によってトレーニング方法が違いますので専門家に相談するのが適切です。
継続したトレーニングが必要なため、子どもの理解を得ながら家族もサポートしましょう。
トレーニング矯正装置は口の筋肉を正常に動かすための、マウスピース型のトレーニング矯正装置です。
咬合育形成は一般的な「小児矯正」で、歯が並ぶために必要なスペースを確保するために矯正装置を装着し顎を拡大する方法です。
受け口の場合は取り外し式のマウスピースや、顎の骨を拡げる拡大床(かくだいしょう)などを使用します。
顎の成長をコントロールできる時期は限られているため、気になる方は早めに歯科クリニックに相談することをおすすめします。
まとめ
アデノイドとは鼻の奥と喉の間にある「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」と呼ばれる組織で、アデノイド顔貌とは咽頭扁桃が肥大した人に現れる特徴的な顔貌です。
丸みをおびた輪郭に口元が前につきだしているのが特徴で、アデノイドが肥大すると鼻呼吸が難しく口呼吸になるため、いびきや口腔内のトラブル・歯並びにも影響します。
アデノイド顔貌は口呼吸や舌の位置が関係して、受け口(反対咬合)になる原因のひとつです。
アデノイド顔貌や受け口の治療方法は大人と子どもで選択肢が異なり、大人の場合は歯列矯正や顎の骨を扱う外科手術が併用されることもあります。
子どもの場合は顎の成長発達にあわせた方法が主流で、口周りの筋肉を鍛える口腔筋機能療法(MFT)や、歯並びを整えるために矯正装置を使った顎の拡大を促す方法が主流です。
海岸歯科室は患者様のお悩みに寄り添い、世界一優しい歯科を目指しております。
アデノイド顔貌が気になる方やお子さんの受け口に悩んでいる方はぜひ一度ご相談ください。スタッフ一同お待ちしております。
監修:理事長 森本 哲郎