マウスピース矯正ができないデメリットとは?マウスピースができない9つの具体例
- 2025年5月31日
- コラム
マウスピース矯正は、透明で目立ちにくく、取り外しも可能なため、現代の矯正治療において非常に人気のある選択肢となっています。
しかし、すべての症例においてマウスピース矯正が適しているわけではありません。
特定の口腔内環境や生活習慣によっては、マウスピース矯正が適応外となることもあるのです。
今回は、マウスピース矯正ができない代表的な9つのケースを紹介するとともに、なぜ適用できないのか、その理由や背景について詳しく解説します。
あわせて、マウスピース矯正が可能な条件についても触れながら、後悔しない治療選びの参考となるよう丁寧に説明いたします。
自分がマウスピース矯正に向いているかどうかを判断するうえで、ぜひ最後までお読みください。
マウスピース矯正ができない9つの可能性
マウスピース矯正は多くのケースに対応できるよう進化していますが、それでも対応が難しい症例が存在します。
この章では、マウスピース矯正が困難または適応外とされる9つの代表的なケースについて、それぞれの背景や理由を詳しく解説していきます。
これらに該当する場合には、ほかの矯正方法を検討する必要があります。
重度の歯周病
マウスピース矯正は、歯を少しずつ移動させて歯列を整える治療法ですが、この過程には歯を支える歯槽骨(しそうこつ)の健康が不可欠です。
重度の歯周病を抱えている場合、この歯槽骨が大きく損なわれていることが多く、歯がしっかりと固定されていない状態になっています。
そのため、マウスピース矯正による力を加えると、歯が過剰に動いてしまったり、逆に動かなくなってしまったりするリスクが高くなります。
顎の骨格に問題がある歯並び
マウスピース矯正は、歯の位置を少しずつ移動させて整える治療法であり、歯そのものの動きに特化しています。
しかし、歯並びの問題が顎の骨格そのものに起因している場合、マウスピースだけでの矯正では根本的な改善が難しいことがあります。
たとえば、上顎と下顎のバランスが極端に崩れている「骨格性不正咬合(こっかくせいふせいこうごう)」のケースでは、骨格のズレを伴うため、歯だけを動かしても正しいかみ合わせにならないのです。
このような症状では、外科手術を併用する外科的矯正(顎矯正手術)が必要とされることがあります。
インプラントを入れている
インプラントは、顎の骨に直接埋め込まれて固定される人工歯根であり、天然の歯と異なり、移動させることができません。
そのため、すでにインプラントを入れている部位がある場合、その歯の位置は矯正によって動かすことができず、治療計画の大きな制約になります。
マウスピース矯正は、全体的な歯の移動を前提として設計されるため、動かせない歯が存在すると、計画通りに歯列が整わない可能性があるのです。
とくにインプラントが複数ある場合や、矯正したい歯の隣にインプラントがあると、動かすスペースを確保するのが難しくなります。
歯を大きく動かす必要がある
マウスピース矯正は、歯を数ミリ単位で少しずつ動かすことで、歯並びを整えていく方法です。
そのため、軽度から中等度の歯列不正には非常に有効ですが、大きく歯を移動させなければならないケースでは適応が難しくなります。
たとえば、奥歯を後方に大きく移動させてスペースを作らなければならない場合や、歯を回転させて向きを大きく変える必要がある場合、マウスピースでは十分な力をかけることができません。
複数本の抜歯が必要
歯列矯正では、歯が並ぶスペースを確保するために抜歯が必要になることがあります。
しかし、複数本の歯を抜くような症例では、抜歯後にできた広い空間をしっかりとコントロールしながら閉じていく必要があり、これは非常に高度な力のコントロールが求められる作業です。
マウスピース矯正は、抜歯スペースを徐々に閉じる動きも可能ですが、複数の歯を抜いた場合には動かす歯の本数や移動距離が多くなり、治療が非常に複雑になります。
さらに、歯の移動が思うように進まないと、治療期間が長期化したり、希望通りの仕上がりにならなかったりするリスクもあります。
そのため、抜歯本数が多い症例では、マウスピース矯正単独での対応が難しくなることが多いのです。
矯正の精度を重視するなら、ワイヤー矯正のほうが有利になるケースといえるでしょう。
埋伏歯(まいふくし)がある
埋伏歯とは、歯ぐきの下に埋もれて生えてこない歯のことを指します。
代表的なのは親知らずや、前歯・犬歯の永久歯などが挙げられます。
マウスピース矯正は、口腔内に露出している歯を対象として力を加えて動かしていく治療法であるため、埋伏歯には力をかけることができません。
そのため、埋伏歯が歯列に影響を及ぼしている場合、まずは埋伏歯を外科的に引っ張り出す「開窓牽引(かいそうけんいん)」などの処置が必要になります。
しかし、マウスピース矯正ではそのような力をかけるアプローチが難しいため、治療の一部または全部をワイヤー矯正で行う必要が出てきます。
自己管理ができない
マウスピース矯正は、患者自身が装置の取り外しを行いながら進める「セルフマネジメント型」の治療です。
このため、毎日決められた時間、しっかりと装着し続けることが成功の鍵となります。
通常は1日20〜22時間の装着が必要で、食事や歯磨き以外の時間は基本的に装着しっぱなしであることが前提です。
しかし、自己管理ができない方にとって、この時間管理や衛生管理は大きな負担となる場合があります。
たとえば、装着時間が足りない日が続くと、歯が計画通りに動かず、矯正が進まなくなるだけでなく、マウスピースが合わなくなるといった問題も発生します。
さらに、口腔内を清潔に保てていないと、虫歯や歯周病のリスクも高まり、矯正の中断を余儀なくされることすらあります。
永久歯が生えそろっていない
マウスピース矯正は、永久歯がすべて生えそろってから行うことを前提としています。
なぜなら、乳歯が残っていたり、未萌出の永久歯があると、歯の位置やかみ合わせが変化してしまう可能性があるため、正確な矯正計画が立てられないからです。
特に中学生以下の子どもや、一部の永久歯の萌出が遅れている方では、矯正中に歯列のバランスが変わり、思わぬトラブルの原因になることもあります。
また、乳歯が抜けるタイミングや、生えてくる永久歯の方向が予測しづらい場合もあり、マウスピース矯正のカスタム設計が追いつかないこともあるのです。
重度の歯ぎしりや食いしばりのクセがある
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方にとって、マウスピース矯正は注意が必要な選択肢となります。
というのも、マウスピースはプラスチック素材でできており、強い力が繰り返し加わると、破損や変形の原因になるからです。
特に、夜間に無意識のうちに強く歯ぎしりをしてしまう方は、就寝中にマウスピースが壊れてしまうことがあります。
このようなトラブルが頻発すると、予定していた矯正スケジュールに支障をきたし、治療期間が長引いたり、効果が十分に得られない可能性も出てきます。
マウスピース矯正ができるケース
マウスピース矯正はすべての人に向いていない一方で、適した症例であれば非常に効果的かつ快適に治療を進められます。
この章では、マウスピース矯正が適応となる代表的なケースについてご紹介します。
自分の歯並びが適応となるかどうかの判断材料として、参考にしてください。
軽度〜中等度の歯列不正
マウスピース矯正は、軽度から中等度の歯並びの乱れに対して非常に高い効果を発揮します。
たとえば、前歯が少しだけ重なっている、すき間がある、歯が内側や外側に傾いているといった状態であれば、透明なマウスピースを使って無理なく矯正できます。
このような症例では、従来のワイヤー矯正よりも目立たず、痛みも少ないため、仕事や学校生活に支障をきたすことなく治療を進められるという大きなメリットがあります。
さらに、短期間での治療が可能なことも多く、特に審美性を重視する方にとっては非常に人気のある選択肢となっています。
かみ合わせの大きな問題がない場合
マウスピース矯正が適しているのは、奥歯のかみ合わせに大きな問題がない場合です。
かみ合わせがある程度整っている状態であれば、前歯の見た目を整えるだけの部分矯正でも、十分な効果が期待できます。
特に「見た目だけ整えたい」「前歯の印象を変えたい」という要望のある方にとって、マウスピースは理想的な治療法です。
また、上下の顎のバランスが大きく崩れていない方であれば、全体矯正にも対応できる場合があります。
このような適応症例であれば、快適かつ効率的に治療を進めることが可能です。
高いモチベーションを持って治療に取り組める人
マウスピース矯正は「自分で外せる」メリットがある反面、「自分で管理する」責任も求められます。
このため、装着時間や衛生管理をしっかり守れる人であれば、治療は非常にスムーズに進みます。
たとえば、「必ず1日20時間以上装着する」「マウスピースを外した後は必ず歯磨きをする」など、ルールを徹底できる方は、マウスピース矯正の恩恵を最大限に受けることができるでしょう。
反対に、装着を怠ることが多い人や、ケアが不十分な人は、治療効果が出にくくなります。
まとめ
マウスピース矯正は、見た目の自然さや取り外しの自由度から人気を集めている治療法ですが、すべての症例に適応するわけではありません。
重度の歯周病や骨格性の不正咬合、大きな歯の移動が必要なケース、抜歯を伴う複雑な矯正、埋伏歯の存在、自己管理の困難さなど、さまざまな要因によってマウスピース矯正が適応外となる可能性があります。
また、永久歯が生えそろっていない成長期の方や、重度の歯ぎしり・食いしばりの癖がある方も、マウスピース矯正には慎重な判断が必要です。
しかし一方で、比較的軽度の歯並びの乱れで、かみ合わせに大きな問題がなく、装着管理をしっかり行える方にとっては、マウスピース矯正は快適で効果的な手段となるでしょう。
東京都港区にある「海岸歯科室」では、インビザラインなどのマウスピース型矯正をはじめ、インプラント治療や難症例に対応する矯正歯科にも力を入れています。
患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な診断と治療提案を行っており、マウスピース矯正が難しい場合でも、代替治療のご相談が可能です。
自分に合った矯正方法を見つけたいとお考えの方は、ぜひ一度「海岸歯科室」にご相談ください。
監修:理事長 森本 哲郎