リンガルアーチ(舌側弧線装置)は子どもの矯正装置のひとつ|目的や注意点についても解説
- 2024年2月16日
- コラム
「リンガルアーチって初めて聞いた!」
「他の矯正方法と何が違うの?」
「リンガルアーチを使用中の注意点は?」
リンガルアーチについて初めて耳にした人、治療の目的や注意点について知りたい人がいるのではないでしょうか。
リンガルアーチは、子ども向けの固定式矯正装置です。
矯正器具の形状から別名「舌側弧線装置(ぜっそくこせんそうち)」とも呼ばれています。
成長期の子どもにとって、正しい歯並びや嚙み合わせは健康的な成長発達に欠かせない要素です。
本コラムではリンガルアーチの特徴や使用目的、メリット・注意点などについて解説するので、リンガルアーチを検討している方は参考にしてみてください。
歯並びや口腔内の状態は個人差があるため、どの治療が適応であるか自分では判断が難しいでしょう。
歯並びのお悩みや、矯正を検討している方はぜひ一度ご相談ください。
リンガルアーチの特徴
リンガルアーチ(舌側弧線装置)は、歯の裏側に装着する取り外し不可能な固定式の矯正装置です。
リンガルアーチは3つのパーツで構成されています。
バンド |
主線を固定するための奥歯に固定するための金属の輪っか。取り外し不可能。 |
主線 |
左右のバンドをつなぐワイヤー |
補助弾線 |
主線に添わせるように装着し、動かしたい歯に力を加えるためのワイヤー |
主線と呼ばれるワイヤーはアーチ状に歯の裏側に装着され、ワイヤーの弾力で特定の歯の位置を変える矯正方法です。
1本または数本の歯を数mm単位で移動させたい治療に用いられます。
移動できる歯は限局的で、ワイヤー矯正のように全体を動かすことはできません。動かす歯の場所や本数によって、主線の位置や補助弾線の本数がかわってきます。
リンガルアーチの使用目的
リンガルアーチの使用目的は下記のとおりです。
・前歯の反対咬合(受け口)の改善
・乳歯から永久歯へ生えかわりのスペース確保(保隙装置としての役割)
・他の矯正器具との併用
・動かしたくない歯の位置を固定
・矯正治療後の後戻り防止
・埋状歯を引っ張る際の土台
リンガルアーチを上下の前歯の裏側に装着することで、前歯数本の反対咬合(受け口)の改善が可能です。
早くに乳歯が抜けた場合、次の永久歯がはえてくるまでに抜けた部分のスペースが狭まる場合があります。整った歯並びのためには、新しい歯が生えるスペースが必要不可欠です。リンガルアーチは隙間を確保する役割も果たします。
また矯正治療後は徐々に歯が元の場所へ戻ろうとします。「後戻り」と呼ばれる現象です。後戻り予防の保定装置として、リンガルアーチを使用する場合もあります。
リンガルアーチは単体でも使用しますが、他の矯正器具と併用することで主線部分の弾力やバンドを使った固定源として、補助的な役割も果たします。
リンガルアーチの適応症例
リンガルアーチの適応症例には以下のようなものがあります。
・前歯の反対咬合
・叢生
歯並びが全身へ及ぼす影響についても理解しましょう。
前歯の反対咬合(はんたいこうごう)
反対咬合は受け口ともいわれ、上の歯よりも下の歯が前に出た状態です。
原因としては次のようなものがあります。
・生まれつき下顎が上顎よりも大きい
・下顎が上顎にくらべて出すぎている
・下の前歯が突出している
反対咬合を放置すると歯へのダメージや上顎の成長が妨げられ、発語や食事にも支障が出るため治療の対象です。
叢生(そうせい)
叢生とは歯並びがガタガタな状態です。不揃いな歯並びは歯磨きしにくく、虫歯のリスクが高まります。
また噛み合わせが悪いことで、顎への過剰な負荷や物をよく噛めずに消化に負担がかかるなどの影響があります。
リンガルアーチの対象年齢
子どもの歯科矯正には下記3つの治療に適したタイミングがあります。
年齢 |
治療の目的・内容 |
|
0期 治療 |
3~5歳頃 (乳歯の時期) |
・嚙み合わせによる顎のずれ ・歯並びに影響する習慣の改善 |
1期 治療 |
6~12歳頃 (乳歯と永久歯の混在期) |
・反対咬合の治療はこのタイミングが多い ・歯並びに対して顎が小さい場合、顎の発育を促す治療 |
2期 治療 |
13歳以降 (永久歯の時期) |
・基本的に大人と同じ治療 |
リンガルアーチは1期治療の乳歯と永久歯が混在する時期に行われます。
1期治療で行うメリットは、子どもの成長発達を活用するため身体への負担が少ない点です。
治療開始が遅れるぶん身体への負担が増え、治療期間も余分に必要となるため開始のタイミングは重要です。治療開始時期を逃さないためにも、歯並びなどが気になる場合は早めに歯科医師に相談しましょう。
リンガルアーチ3つのメリット
リンガルアーチ装着3つのメリットは以下のとおりです。
1.矯正装置よりも違和感が少ない
2.リンガルアーチを装着していることが分かりにくい
3.2期治療への移行がスムーズ
1.矯正装置よりも違和感が少ない
矯正装置は歯の表面に装具を接着し、装具にワイヤーを通しておこなうため、装具の違和感が強いといわれています。
一方リンガルアーチは簡易的な作りで、2か所の固定装具とワイヤーのみのため、違和感は少ないでしょう。
2.リンガルアーチを装着していることが分かりにくい
歯の裏側に取り付けているため、大きく開口しない限り正面からは矯正器具の装着が目立ちません。
子どもにとって矯正装具が目立つことが精神的なストレスになるケースもあるため、周囲にわかりにくいことは大きなメリットです。
3.2期治療への移行がスムーズ
1期治療の期間にリンガルアーチを用いた矯正治療に慣れていれば、仮に2期治療が必要になった際も抵抗少なく移行できるでしょう。
リンガルアーチ装着時3つの注意点
リンガルアーチ装着時3つの注意点は下記のとおりです。
1.リンガルアーチは取り外しできない
2.固定装置のため歯磨きしにくい
3.リンガルアーチ装着後しばらくは違和感や痛みがある
治療効果を最大限に高めるためにも、注意点をしっかり理解しておきましょう。
1.リンガルアーチは取り外しできない
リンガルアーチのバンドは奥歯にセメントで固定されるため、取り外しができません。主線のワイヤーを取り外せるのは歯科医師で、ご自身で外すことはできません。
リンガルアーチ装着中はバンドの脱落やワイヤーが変形しないよう、ガムやキャラメルなどの粘着性のある食べ物は注意が必要です。装着中は控えた方がよいでしょう。
2.固定装置のため歯磨きしにくい
リンガルアーチは固定されているため、歯磨きしにくいのが難点です。磨き残しによる虫歯や、歯と歯ぐきの間の清掃不良は歯肉炎の原因にもなります。
子どもの年齢にもよりますが、保護者の歯磨き補助や見守りが必要な場合もあるでしょう。家庭でのブラッシングに加え、定期的な歯科医院でのメンテナンスも大切です。
3.リンガルアーチ装着後しばらくは違和感や痛みがある
主線のワイヤーを固定するためのバンドは歯に固定するため、加わる力によって装着後数日間は痛みを感じることがあります。最初のうちはリンガルアーチ装着による口腔内の違和感や食事のしづらさがあるかもしれませんが、徐々に慣れるでしょう。
また装具が気になり、必要以上に舌で触ってしまうと舌を傷つけることもあります。
リンガルアーチの矯正期間
矯正期間は歯並びの状態によって変わります。1本だけの軽度の不正咬合であれば数か月~半年ほどで完了しますが、状態によっては年単位の時間が必要です。
また矯正後の後戻りを防ぐために、保定装置の装着が必要な場合はさらに時間がかかります。
まとめ|リンガルアーチは幅広く使用される小児矯正装置
リンガルアーチは子ども向けの固定矯正装置です。
奥歯にバンドと呼ばれる金属の輪を固定し、主線とよばれるワイヤーをバンドと装着し、歯の裏側に沿わせたワイヤーの弾力で動かしたい歯に力をかける治療方法です。
主な適応症例には、反対咬合(受け口)や叢生(ガタガタの歯並び)などがあります。
また矯正装置としてだけでなく、乳歯が抜けたあと永久歯がはえてくるまでのスペースを確保する目的でも使用します。他の矯正と併用するための補助的役割や、後戻りを予防するための保定装置としても使用でき幅広い使用目的があります。
リンガルアーチの対象年齢は6~12歳で、治療期間は歯並びの状態によりますが数か月~年単位が必要です。
リンガルアーチは固定装置で取り外し不可のため歯磨きしにくく、虫歯には注意が必要です。また固定装具による違和感や痛みを感じる場合もありますが、徐々に慣れるでしょう。
海岸歯科室は患者様のお悩みに寄り添い、世界一優しい歯科を目指しております。
ご本人の状態により治療方法は変わるため、リンガルアーチやその他の矯正治療が気になっている、または検討されている方はぜひ一度ご相談ください。
スタッフ一同お待ちしております。
監修:理事長 森本 哲郎