大人の歯科矯正の費用の相場はおおむねどのくらい?
- 2024年3月20日
- コラム
歯科矯正は子どもの時にするというのが、一般的な傾向です。
では果たして大人になると矯正はできないのでしょうか。
さらに、大人になると矯正の費用はどのくらいかかるのでしょうか。
今回は歯科矯正の一般的な費用の相場や、大人になってから矯正する場合の注意点などについて説明していきます。
矯正治療のプロセスを知っておこう
大人の歯科矯正の費用について知る前に、まずは一般的に矯正治療というのはどんな過程を経て実施していくのかについて見ていきましょう。
初診とカウンセリング
歯科矯正治療をしたいという場合、患者さんはまず歯科医院を初めて受診し、歯の状態や治療の希望について歯科医師と相談することになります。
これがいわゆる初診となり、このときに歯科医師は患者さんの歯や顎の状態を詳しく診断し、歯並びや噛み合わせの問題などを検査します。
さらに治療の必要性、そして適切な治療方法などについて説明し、患者さんの希望や予算に合わせて治療計画を立案します。
なぜなら、歯科矯正治療には異なるいくつかの方法があり、それによって治療方法も使用する器具も異なってくるからです。
ですからまずはこの時点で、どんな方法を選ぶのかを費用と照らし合わせながら決めていく必要があります。
カウンセリングでは、治療の期間や費用、治療中のケアや注意点などについても説明されます。
診断・検査と治療計画
治療を開始する前に、歯科医師は患者の歯や顎の状態をさらに詳しく診断するための検査や評価を行います。
これには、歯のレントゲン撮影、模型の取得、歯の写真撮影、顎関節の検査などが含まれます。
診断や検査が終了したら、次に患者さんの状態や治療目標に基づいて、治療の方法、治療期間、調整の頻度、予想される結果、費用などの個別の治療プランを立てます。
装置の取り付け
治療計画が決定されると、いよいよ矯正治療のメインとなるブラケットやワイヤー、透明なマウスピースなどの歯科矯正を実施するための装置の取り付けとなります。
装置に関しては、患者さんの歯の状態や、見た目を気にするのか、日常生活への影響、そして患者さんがきちんと治療に対して取り組めるかなどの要素を見ながら、どれを選ぶのか医師と相談しながら決定することになります。
この過程で歯科医師は患者さんの歯にブラケットを接着し、ワイヤーを装置に通して歯を移動させるための調整を行います。
定期的な調整
その後は取り付けた装置を微陽性しながら、徐々に歯を理想の位置へと移動していきます。そのため治療中は、定期的な調整が必要です。
定期的な診察と調整により、歯の移動が監視され、治療が進められ、プラン通りの位置に歯が移動したら治療自体は終了です。
この装置の取付と定期的な調整が、歯科矯正治療の中心となる項目となります。
なぜ歯科矯正の費用は高額になりがちなのか?
歯科矯正の費用は「高い」と思われているかも知れません。
しかし当然ですが費用がかかるのには、根拠があります。
歯科矯正の費用が高額になる理由は、以下の3つの観点から理解できるはずです。
治療の複雑さと期間
歯科矯正治療は、患者さんの歯の状態や治療目標に応じて、異なる複雑なプロセスを経て行われます。
さらに、歯の並びや噛み合わせの問題が複雑である場合、治療にはより長い期間と多くの調整が必要です。
治療が長引くほど、治療にかかる時間や労力が増えるため、短期間で終了できる一般的な治療と比較して費用も高額になります。
その他、一部の患者さんのケースでは、外科手術が必要な場合があります。
例えば、顎の骨格異常や歯列の重度の不正など、歯科矯正だけでは改善できない場合に手術が必要となるのです。
手術には高度な技術や医療施設の利用が必要であり、これらの要素が費用を高額にしてしまうのです。
使用される材料や技術が高度
歯科矯正治療に使用される材料や技術の質もまた、治療費用に大きな影響を与えます。
高品質な治療のための装置であるブラケット、ワイヤー、あるいは透明なマウスピースなどの材料は高価なため、治療の効果や快適性を向上させる役割を果たしますが、費用も高額になります。
同様に、最新の技術や装置を使用することで、治療の効率性や正確性が向上します。しかしこれらの技術や装置の導入が、費用が高額になる原因となります。
矯正治療のための設備の質
設備や施設の質も治療費用に影響します。最新の歯科設備や快適な待合室など、患者の利便性や快適性を向上させるための施設には、費用がかかり、治療費用に反映されることがあります。
ただしこれらの要因は何かと時間がかかり、その分治療期間中にできるだけ快適に過ごしたい患者さんにとっては、プラスになる要素といえるはずです。
金額の内訳は?(治療前)
このように矯正治療は一般的な歯科治療と比較して、器具が必要だったり、治療に時間や手間がかかったりして、高額になりがちです。
続いてこの費用に関して、一般的な相場となる金額を見ていきましょう。
まずは費用の中でも治療前にかかる項目から説明します。
・初診料/無料〜16万円程度
一般的に初めて歯科矯正治療を受ける際には、初診料がかかります。初診料は治療院や地域によって異なりますが、一般的には数千円から数万円程度です。
この初診料にはレントゲン撮影、状況によってCTや各種検査などが含まれ、その内容によって費用が変わってきます。
まずはじめにどの程度の金額がかかるのかについて。事前に相談してみても良いでしょう。
・カウンセリング料/無料〜5000円程度
初診料の発議に必要となるのは、実際に治療を開始するという段階になった時に実施するカウンセリングの費用です。
カウンセリングは、実際の治療プランの立案にするために、患者さんの歯の状態を詳細に評価し、治療目標を設定するという内容となります。
このプロセスには時間と専門知識が必要なため、その分の費用がかかる場合がありますが、医院によっては初期費用に含まれる場合もあります。
金額の内訳は?(矯正・治療中)
続いて矯正治療自体にかかる金額です。
・矯正治療費用50〜150万円程度
これが大人の矯正における費用の中で、中心的な存在となるものです。
これは矯正のための装置の費用、そして取付の費用となります。
矯正のための装置にはいろいろな種類があり、装置自体の費用が異なるため、どの装置を使って治療するかによって大きく変動してきます。
方法としては大きく分けると4つの種類となり
- ワイヤーを使用した表側矯正の場合、約50~90万円程度
- ワイヤーを使用した裏側矯正の場合、約90~140万円程度
- マウスピース矯正で全体を矯正する場合、約40~100万円程度
- マウスピースで上下前歯を中心とした矯正をする場合、約20~45万円程度
が相場となっています。
ただし繰り返しになりますが、この費用はあくまで目安であり、患者さんの状況によって大きく開きがあります。
たとえば矯正の際にあまり歯を動かす必要がない患者さんよりも、動かす幅が大きくなる患者さんの方が、矯正にかかる期間が長くなり、その分費用も高くなります。
・定期的な調整やメンテナンスに関する費用
矯正治療を受ける間は、定期的な調整やメンテナンスが必要になります。これらの費用は、治療期間全体を通じて累積するため、全体の費用に影響を与えます。
歯科矯正の費用の支払い方法にはどんな方法がある?
次にこの矯正の費用の支払い方法について見ていきましょう。
費用が高額になるのなら、できるだけ月々の負担が少なくなるような支払い方法を選択したいはずですので、支払い方法に関しても事前にしっかりと検討しておくべきでしょう。
一括支払い
一括支払いは、矯正治療全体の費用を一度に支払う方法です。
これにより、治療が進行する間に追加の支払いが不要になりますが、一度に高額な支払いが必要になるため、費用面での負担が大きくなる場合があります。
分割払い
分割払いは、矯正治療費用を複数回に分けて支払う方法です。例えば、治療期間中に月々の分割金額を支払うことができます。これにより、一括支払いよりも負担が軽減されますが、利息や手数料が発生する場合があります。
ローン
歯科ローンは、金融機関や歯科医院との契約に基づいて、治療費用を借り入れる方法です。返済期間や金利などの条件は金融機関によって異なりますが、長期にわたる支払いが可能です。
クレジットカード
クレジットカードを利用して矯正治療費用を支払うこともできます。分割払いが可能な場合がありますが、カード会社や取引先によって条件が異なります。
トータルフィー制度
トータルフィー制度は、矯正治療全体の費用を一定期間や回数に分割して支払うシステムです。
通常、治療の初期段階で一定の金額を支払い、それ以降の治療費用は月々の定額支払いで賄います。この制度には、追加の調整やトラブル時の保証が含まれることがあります。
トータルフィー制度は、一定の金額を支払って全ての治療費用をカバーするため、追加料金の心配がなく、予期せぬ費用に備えることができます。また、治療期間中の支払い負担を軽減するため、患者にとって利便性が高い支払い方法の一つです。
矯正治療の際に大人と子どもにはどんな違いがある?
日本国内における歯科矯正治療には、大人と子どもの患者でいくつかの違いがあります。
これらの違いは、治療の方法、費用、保険適用の有無、および治療の複雑さなどによって開きが出てきます。
治療の方法
大人と子どもの歯科矯正治療で最も一般的な違いは、治療の方法です。
一般的に、子どもの場合、成長段階に合わせて歯科矯正治療が行われます。このため、顎の成長を促進するための機械的な装置や成長予測のための顎の骨格検査が含まれることがあります。
一方、大人の場合、成長段階が終了しているため、治療は歯の位置を調整するためのより徹底した方法に焦点を当てることが一般的です。
費用の違い
大人と子どもの歯科矯正治療の費用には違いがあります。
一般的に、大人の場合、歯や顎の成長が完了しているため、治療により複雑な問題を解決する必要があります。
そのため、大人の治療は通常、子どもの治療よりも高額になる傾向があります。
ただし、治療の複雑さや必要な手術などの要因によって費用は変動しますので単純に比較はできません。
保険適用の有無
さらに気になるのが、矯正治療に健康保険が適用されるかどうかということかも知れません。
残念ながら歯科矯正治療は、一般的に健康保険の適用外の自費治療となります。
しかし子どもの場合、重度の歯列不正や顎の骨格異常など、健康上の問題がある場合には一部が保険適用になることがあります。
一方、大人の場合、ほとんどのケースで自費治療となります。
まとめ
歯科矯正は子どもだけのものではなく、大人になってからでも治療は可能です。
ただし様々な条件が異なってきますので、費用面で大人の矯正の方が高くなる場合もあります。
まずは一度歯科医に相談して、費用面を含めた納得できる治療プランを検討してみてください。
監修:理事長 森本 哲郎