歯ぎしり用と歯科矯正用のマウスピースの違い|メリット・デメリットやお手入れ方法について解説
- 2024年3月22日
- コラム
「マウスピースは何のために使うの?」
「痛みや窮屈さはないのかな…?」
「マウスピースで歯科矯正はできる?」
マウスピースの使用目的やメリット・デメリット、装着感について疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
マウスピースの役割は、食いしばりや歯ぎしりなどの外的刺激から歯を守ること、また歯列矯正や矯正後の後戻り予防です。
使用目的によって、市販のものか歯科医院で作成するか購入先も変わります。
本コラムではマウスピースの使用目的にあわせた種類やメリット・デメリットについて解説します。今後、マウスピースを選択する際の参考になるでしょう。
マウスピースを使用する2つの目的
マウスピースを使用する主な目的は、以下の2つです。
1.歯ぎしりやスポーツ時の衝撃から歯を守る
2.歯列矯正や矯正後の後戻りを予防する
それぞれの目的を詳しく解説します。
歯ぎしりやスポーツ時の衝撃から歯を守る
歯ぎしりとは専門用語では「グラインディング」と呼ばれ、下顎の運動を伴う上下の歯が非機能的に接触している状態です。
他にも「クレンチング(噛みしめ)」や「タッピング(上下の歯をカチカチいわせる動き)」とともに、睡眠時の悪い癖のひとつです。
通常、物を噛む力は自身の体重程度ですが、就寝時の歯ぎしりの力は100kgほどになるといわれています。
過度な力は歯に負担がかかり、歯の詰めものや被せものが割れたり欠けたり、歯そのものの寿命を縮めます。
またスポーツの分野でも徐々にマウスピースの効果や必要性が認知されはじめ、種目によってはマウスピースの装着が完全義務化されています。
義務化されている種目は、激しくぶつかり合うボクシングやラグビー、空手、格闘技などです。
他にはバスケットボールや硬式野球、テコンドーなど装着が許可・推奨されている種目もあります。
大切な歯を外的衝撃から守るために、マウスピースは重要な役割を果たします。
歯列矯正や矯正後の後戻りを予防する
マウスピースは衝撃から歯を守るだけでなく、矯正の役割もあります。
歯科矯正と聞くと、装具とワイヤーを使った「ワイヤー矯正」を思い浮かべる人もいるでしょう。
しかしワイヤーを使わず、透明のマウスピース型の装置で歯を動かしていく方法があります。
マウスピース矯正にもいくつか種類があり、そのなかで「インビザライン」は世界でも治療実績が増えている治療法です。
また矯正治療が終了したあと、歯が元に戻ろうとする「後戻り」を予防するための保定装置としての役割もあります。
歯ぎしり用マウスピース(ナイトガード)を使用する3つのメリット
歯ぎしり用のマウスピースは「ナイトガード」とも呼ばれます。
ナイトガードを装着する主要なメリットは、下記の3つです。
1.歯のすり減りを防ぎ歯の寿命を伸ばす
2.顎や全身への負担を減らす
3.噛み合わせの調整が行える
ナイトガードのメリットを正しく理解し、歯ぎしりに当てはまる方は装着をおすすめします。
歯のすり減りを防ぎ歯の寿命を伸ばす
マウスピースの使用目的でも解説したとおり、歯ぎしりによる歯への荷重は100kgにも及ぶといわれており、歯に与える影響ははかり知れません。
歯が割れたり折れたりする状態を破折(はせつ)といいますが、永久歯の喪失原因として歯周病・虫歯に次いで、3位は破折というデータがあります。
破折にはさまざまな原因がありますが、持続的に何度も強い力がかかる食いしばりや歯ぎしりも要因のひとつです。
よって近年では、歯にかかる力の適正コントロールも重要視されています。
また歯ぎしりや食いしばりは睡眠時だけでなく、日中の覚醒時にもみられます。
覚醒時の食いしばりは緊張やパソコンなどに集中しているときに発生することが多いのに対し、睡眠時の歯ぎしりの原因は解明されていません。
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは無意識だからこそ、ナイトガードは重要な役割を果たします。
顎や全身への負担を減らす
歯ぎしりや食いしばりが起こっている際、頭の側面にある側頭筋が過度に緊張しており、緊張型頭痛を引き起こす原因になります。
また就寝時の歯ぎしりは、歯だけでなく顎関節や咀嚼に使う筋肉に持続的に力がかかるため、起床時の口の開けにくさや、顎の疲労感・痛みといった顎関節症の症状を引き起こします。歯ぎしりや食いしばりは顎関節症のリスク因子です。
噛み合わせの調整が行える
嚙み合わせが悪いと、咀嚼の不具合だけでなく身体全体のバランスに影響し、顎関節症や頭痛・肩こりを引き起こします。
歯ぎしりや食いしばりで歯の表面が削れたり、歯ぐきが沈んだりすると無自覚のうちに噛み合わせが変わります。
ナイトガードは噛み合わせの調整にも有効です。
矯正用マウスピースを使用する3つのメリット
治療の一環として矯正用マウスピースを使用する場合、3つのメリットがあります。
1.装着時の違和感・痛みが少ない
2.取り外し可能で目立ちにくく手入れしやすい
3.日常生活上の制限が少ない
ワイヤー矯正と比較しながら矯正用マウスピースのメリットについて詳しく解説します。
装着の違和感・痛みが少ない
治療開始直後は多少の違和感がある人もいますが、ワイヤー矯正に比べると段階的に歯を動かしていくため、痛みが少ないといわれています。
どうしても違和感や痛みが我慢できない場合は、マウスピースは取り外せる点でワイヤー矯正と大きく異なります。
取り外し可能で目立ちにくく手入れしやすい
ワイヤー矯正は装具が目立ちやすいのに対し、透明なマウスピースは装着していることが目立ちません。
仕事柄や矯正の見た目が気になる人にとって、目立ちにくさは大きなメリットです。
また取り外しできるため、日頃のブラッシングに支障をきたしません。
ワイヤー矯正は取り外しできないため歯垢が蓄積しやすく、虫歯予防のための念入りなブラッシングが必要です。
日常生活上の制限が少ない
ワイヤー矯正中は固いものや粘着性のものは装具が破損するリスクがあるため、避けなければなりません。
しかしマウスピースは食事中に取りはずす手間はあるものの、飲食に特に制限なく楽しめます。
またワイヤー矯正は激しく体がぶつかり合うようなスポーツも注意が必要ですが、その点も気にする必要がありません。
マウスピースのデメリット
マウスピースのデメリットとして、以下のようなことがあります。
・取り外し可能なぶん、正しく装着しないと効果が得られない
・マウスピース矯正の場合、適応症例が限られる
・マウスピースを装着したままの飲食はできない
・取り外したあとに紛失する恐れがある
・装着の違和感や痛みがゼロではない
・作成や購入の費用がかかる
メリットの多いマウスピースですが、もちろんデメリットも存在します。
マウスピースは装着しないと効果が得られないため、自己管理が難しい人には向いていないでしょう。
マウスピースの種類
マウスピースには、以下の2種類があります。
・ソフトタイプ
・ハードタイプ
次項でそれぞれの特徴を解説します。
ソフトタイプ
シリコンやゴム製のものが多く、曲げられるほど柔らかい素材です。
素材が柔らかいため装着時の違和感が少ないのがメリットですが、柔らかいゆえに耐久性はハードタイプに劣ります。
歯ぎしり用のマウスピースを装着する場合、初めはソフトタイプを試用し慣れたらハードタイプに移行するケースもあります。
ハードタイプ
硬い樹脂素材で作成されることが多く、ソフトタイプより耐久性に優れており、穴が開きにくいメリットがあります。
一方で、硬いぶん装着時の違和感があり、噛み合わせの調整が難しいのがデメリットです。
マウスピース購入・作成費用の相場
マウスピースを入手するには、市販のものを購入するか、歯科医院で作成するかの2通りです。
市販のものは自分で手順に沿って作成する必要があり、価格は1000-3000円と安価なぶん、型取りがうまくいかないと装着時の違和感が強いでしょう。
歯科医院で保険適応し作成する際の相場は3000-5000円程度です。
市販のものと比較すると高価になりますが、しっかり型取りをおこなうため、自分にあった最適なものが作れるでしょう。
マウスピースの保管・お手入れ方法
マウスピースをお手入れする際は、研磨剤入りの歯磨き粉やお湯を使用すると傷がついたり変形したりする恐れがあるため、流水下でやわらかいブラシを使い洗いましょう。
定期的な洗浄剤の使用もおすすめです。
保管する際は風通しのよい場所で乾燥させ、紛失や破損を防ぐため専用のケースで保管しましょう。
使用頻度と使用方法によりますが、マウスピースの寿命は約1年程度です。
穴が開いたり、破損したりした場合は作成しなおしましょう。
まとめ|マウスピースは歯を守り矯正する役割がある
マウスピースを装着する主な目的は「歯を守る」「矯正・矯正後の後戻り予防」の2つがあります。
歯を守る役割としては、食いしばりや歯ぎしりなどの過剰な力で歯が削れたり欠けたりするのを防ぎます。
就寝中の歯ぎしりは、歯に100kgほどの力がかかるといわれており、永久歯を失う原因である破折の要因です。
また食いしばりや歯ぎしりによる噛み合わせの変形、顎への負担が顎関節症や頭痛・肩こりなど全身にも影響を及ぼします。
マウスピースのもうひとつの役割は、歯列矯正や矯正後の後戻り防止です。
ワイヤー矯正に比べ、取り外しが可能なぶん日頃のブラッシングや日常生活上の制限が少ないことがメリットです。
マウスピースはソフトタイプとハードタイプの2種類があり、ソフトタイプは装着の違和感が少ない反面、耐久性が劣ります。
一方、ハードタイプは耐久性に優れていますが、そのぶん違和感や噛み合わせの調整が難しいのがデメリットです。
マウスピースは市販のものを購入するか、歯科医院で作成できます。
使用頻度や保管方法にもよりますが寿命は約1年で、定期的なメンテナンスの必要があります。
海岸歯科室は患者様のお悩みに寄り添い、世界一優しい歯科を目指しております。
歯ぎしりに悩んでいる方や、マウスピースが気になる方はぜひ一度ご相談ください。
スタッフ一同お待ちしております。
監修:理事長 森本 哲郎