舌に歯形がつくのは不調のサイン|原因と予防・改善策を解説
- 2024年6月19日
- コラム
「いつも舌にギザギザの痕がついている」
「舌に歯型がつくのは病気なの?」
「なぜ舌に歯型がつくの?」
ふと鏡でご自身の舌をみた際に、舌の両側に歯型がついていることはないでしょうか。
本来、正常な舌に歯型はついておらず、歯型がついた状態の舌を「歯痕舌(しこんぜつ)」といいます。
舌に歯型がつく原因はさまざまで、なかには重大な疾患が隠れている可能性もあるのです。
本コラムでは、舌に歯型がつく主な原因と対策について詳しく解説します。
舌に歯型がついた状態を放置するデメリットも解説するため、心当たりがある方は口腔内の状態も含め、一度お気軽にご相談ください。
舌に歯形がつくのは異常?舌は健康のバロメーター!
舌は口のなかにある重要な臓器で、表面は粘膜で覆われ筋肉の塊でもあります。
味覚や温度を感じる器官でもあり、咀嚼や嚥下、発声にも関わる臓器です。
正常な舌は、淡い紅色で薄い舌苔があり、大きさは歯の内側に舌全体が治まっている状態です。
舌は全身の不調が表れやすい部位で、健康のバロメーターになります。
なぜなら毛細血管が豊富で舌の表面は粘膜で覆われており、血流や体内の水分量によって変化が読み取りやすいためです。
舌の色や舌苔の付着程度、質感のほかに「舌に歯型がついていないか?」も重要な観察ポイントです。
通常は舌に歯型はつかないため、もしご自身の舌に歯型がついていれば原因を探る必要があるでしょう。
舌に歯形がつく6つの原因と予防・改善策
舌に歯型がつく主な6つの原因は、下記のとおりです。
1.むくみ
2.TCH(歯列矯正癖)
3.歯並び・噛み合わせ
4.低位舌
5.舌が大きい(むくみ/巨舌(きょぜつ)症/先端巨大症)
6.舌がん
それぞれの原因をひきおこす要因と予防・改善策について解説します。
1. むくみ
体内に過剰な水分がたまると顔や手足がむくむように、舌もむくみますが体感している人は少ないかもしれません。
むくみは体内の水分調整のバランスが崩れたサインで、舌に歯型がつくことで自覚する人もいるでしょう。
舌のむくみを引き起こす要因には、下記のようなものがあります。
・体内の水分バランスの崩れ(塩分のとりずぎ、胃腸の不調など)
・基礎代謝の低下(加齢、運動不足、冷えなど)
・基礎疾患(腎臓、肝臓、胃腸の疾患によるもの)
・内服薬の副作用
またむくみの予防や解消方法は、下記のとおりです。
・塩分の濃い食事を控える(ファストフードやインスタント食品)
・軽い運動で血流を促し、代謝をあげる
・入浴やマッサージなどで疲労を解消し、血流を促す
・ストレスをためない
・体を冷やさない工夫をおこなう(空調の調整、冷たい飲み物をとりずぎない)
むくみの原因には暴飲暴食など一時的なものから、食生活の乱れや運動不足などの生活習慣、場合によっては重大な疾患の可能性もあります。
セルフケアで解消しない、むくみが長期間続く場合は病院を受診しましょう。
2. TCH(歯列接触癖)
TCHはTooth Contacting Habitの略で「歯列接触癖」と呼ばれています。
通常、安静時に口を閉じた状態で上下の歯と歯の間には1〜3㎜の隙間があるのが正常です。
日常生活のなかで、上下の歯が接触するのは会話や物を噛んだり、飲み込んだりする場合のみですが、TCHは持続的に上下の歯を接触させる無意識の癖といえます。
TCHを引き起こす要因はストレスや緊張状態で、特に何かに集中しているときに起こりやすいと考えられています。
上下の歯の接触は、歯ぎしりや食いしばりのように強い力ではありませんが、わずかな力でも口を閉じようとする筋肉の力は働いています。
強い力でなくとも持続的に力が加わると顎や歯への負担が増し、顎関節症や知覚過敏の悪化や破折の原因にもなりかねません。
TCHの改善策には、下記のような方法があります。
・日常のなかのストレスを自覚する
・1日に数回、口を閉じて歯を接触させない感覚を練習する
・TCHは無意識のため、「歯を離す」と書いたメモをパソコンやテレビに貼って意識する
・口腔内のリラックスのために「あいうべ」体操をおこなう
TCHは無意識で自覚しにくい癖のため、癖を意識したり日常的に練習したりするのが大切です。
3. 歯並び・噛み合わせ
歯並びや噛み合わせが悪いと、歯列の凹凸や口の中が狭くなるために舌に歯型がつく場合があります。
また歯並びや虫歯治療後の歯への詰め物や被せ物の影響で、噛み合わせが悪くなるケースもあります。
このように歯並びや噛み合わせと舌は、相互に密接な関係性があるのです。
歯並びや噛み合わせが見た目の審美性だけでなく、全身状態に及ぼす影響は下記のようなものがあります。
・歯垢がたまりやすくブラッシングしにくいため、虫歯になりやすい
・顎への負担や変形による顎関節症を引き起こす可能性がある
・噛み合わせが悪いと咀嚼筋のバランスが崩れ、肩こりなどを引き起こす
・咀嚼が不充分なため、消化に負担がかかる
・歯並びにより口が閉じにくく、口腔内が乾燥し免疫力が低下する
歯並びや噛み合わせの改善には、成長過程によって対策がかわります。
成長期であれば、舌の癖や歯ぎしりの予防、しっかり物を噛むことで顎の発達が促され歯並びが改善する場合もあります。
成人になってからの歯並びや噛み合わせには、歯列矯正の選択肢もあります。
4. 低位舌
低位舌とは舌が正常な位置よりも低い位置にある状態を指し、舌の筋力低下や口呼吸が原因といわれています。
本来、舌の正常な位置は、舌の先端が上顎の前歯の裏側から少し奥に触れ、舌の表面が口の中の天井に当たる部分(口蓋:こうがい)に接触している状態です。
低位舌がもたらす全身への影響は、下記のようなものがあります。
・舌が下方に位置しているため気道が狭くなり口呼吸になりやく、いびきをかきやすい
・口呼吸は口腔内が乾燥しやすく、虫歯や歯周病、口臭の原因になりやすい
・舌の筋力と操作性が弱いため、食事の際に音を立てて食べる・嚥下が苦手でむせやすい
・舌がうまく使えないために、活舌が悪くなる
・舌が低位置のため、顎の成長が促されず歯並びに影響する
また低位舌の改善のためには「口腔筋機能療法(MFT)」が効果的です。
この訓練法は舌や口周りの筋肉を鍛えることで、舌や唇の位置の改善、呼吸や口腔機能の改善効果が期待できます。
舌が正しい位置に戻ると気道が広がり呼吸が楽になり、顎の位置が安定するため歯並びの改善及び矯正の後戻りを防ぎます。
5. 舌が大きい(むくみ/巨舌(きょぜつ)症/先端巨大症)
舌が大きくなる原因にはむくみや肥満などの要因から、疾患が隠れている場合もあります。
舌が口の中に収まりきれないほどの「巨舌(きょぜつ)症」の場合、うまれつきの遺伝的な疾患や、後天的な要因には腫瘍やリンパ腫が考えられます。
また成長ホルモンの過剰分泌により、身体の変化や代謝異常が起こる「先端巨大症」は、舌が分厚く大きくなる症状があります。
一時的なむくみや肥満が原因の場合は、食生活や生活習慣の見直しで改善が期待できます。
しかし何かしらの疾患が隠れている場合もありますので、気になる症状があれば病院に受診しましょう。
6. 舌がん
一般的に舌がんとは、口を大きく開けたときに見える舌の前方2/3の範囲に生じたものを指します。
男女の比率は約3:2と男性に多く、発症年齢は60代に多いとされていますが20〜30代の若年者にもみられるため注意が必要です。
舌がんを誘発する因子としては、次のようなものがあります。
・喫煙や飲酒などの化学的な慢性刺激
・虫歯や合わない詰め物、極端に傾いた歯などによる機械的な慢性刺激
・口の中の不衛生な状態
舌に歯型がつく原因も何かしらの慢性的な刺激が考えられるため、舌がんの危険因子のサインとして重要です。
下記のような症状が見られる場合は歯科医院や耳鼻咽喉科に相談しましょう。
・舌に腫れや痛み、しこりがある
・口内炎が2週間以上経過しても治らない
・舌に白や赤い斑点がある
・舌の側面に虫歯の詰め物や入れ歯が当たってこすれている
舌がんは早期発見により生存率の高い疾患のため、気になる症状や兆候があれば、早めに受診しましょう。
舌に歯形がついた状態を放置するデメリット
舌に歯型がつくのは正常な状態ではありません。
食生活の乱れによるむくみなど一時的な原因のものもあれば、舌の癖や筋力低下により口腔内が健康的に維持できない状態や、内臓疾患や舌がんなど重大な疾患が隠れているサインでもあります。
舌の健康と全身状態には密接な関係性があり、舌は健康の指標になります。
原因が何であれ舌に歯型がつくのは異常で、そのまま放置すると健康が失われかねないため予防や対策が必要です。
まとめ|舌は健康のバロメーター!歯型は放置せず対策を
舌は味を感じるだけでなく、咀嚼や嚥下・発声に関わる重要な口のなかの臓器です。
舌に歯型がついている状態は正常ではなく、何かしらの不調のサインといえます。
歯型がつく原因として、むくみや舌の使い方の癖、筋力低下による低位舌などがあげられます。
これらは食生活や生活習慣を見直し、口腔内の機能を鍛えるトレーニング(MFT)を通して改善が期待できます。
しかし歯並びや噛み合わせ、疾患による巨舌や舌がんなどが原因の場合は、セルフケアでの対策は限界です。
歯科医院での歯列矯正や、病院で適切な治療を受ける必要があります。
海岸歯科室は患者様のお悩みに寄り添い、世界一優しい歯科を目指しております。
本コラムのように舌に歯型がついて気になる方や、その他にも定期的な歯科検診やケアをご希望の場合はぜひ一度ご相談ください。
スタッフ一同お待ちしております。
監修:理事長 森本 哲郎