インプラントは大丈夫?MRI検査前に確認すべき注意点と歯科相談の極意
- 2025年6月11日
- コラム
インプラントを入れているとMRI検査に支障が出ると聞いて、不安に感じたことはありませんか?
歯科治療で使用されるインプラントは、チタンなどの金属素材が使われており、磁力を利用するMRI検査において画像が乱れる「アーチファクト」や安全性への懸念が話題になることがあります。特に整形外科で使用される人工関節や心臓ペースメーカー、人工内耳と並び、体内の金属が磁場や電波に反応するリスクは多くの方が心配する要素です。
実際、厚生労働省が発表した調査でも、MRI検査の影響により検査前にインプラントの素材確認を必要とする医療機関は増加傾向にあります。CT検査では問題が出なかったのに、MRI検査では発熱や画像の歪みが生じるケースも報告されています。
「自分のインプラントは大丈夫なのか?」「歯科医師に何を伝えれば安全に検査を受けられるのか?」と迷っている方も多いはずです。
この記事では、MRI検査前に確認しておくべき素材の種類や安全性、医院やクリニックでの相談方法まで詳しく解説します。インプラントを入れているからといって検査を諦める必要はありません。正しい知識と準備で、安心して検査に臨むための全知識をお届けします。
海岸歯科室は、患者様一人ひとりに寄り添い、安心して治療を受けていただける環境をご提供しています。最新の設備と技術を駆使し、虫歯治療からインプラント、予防歯科まで幅広い診療を行っています。お口の健康を守るために、丁寧なカウンセリングと治療計画を立てています。皆様のご来院を心よりお待ちしております。歯に関するお悩みは、ぜひ海岸歯科室へご相談ください。

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住所 | 〒261-0014千葉県千葉市美浜区高洲3-23-1 ペリエメディカルビル美浜 3F |
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インプラントとMRIは共存できる?その不安、歯科医が解消します
MRI検査の基本とは?身体にどう使われる検査かを解説
MRI検査は、身体の内部構造を詳細に映し出す非侵襲的な画像診断法であり、磁力と電波を活用して断層画像を取得する医療機器です。正式名称は「Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)」で、日本の医療現場では脳、脊髄、関節、内臓の病変の早期発見に広く利用されています。X線やCTとは異なり、放射線を使用しないため、身体への負担が少ないことが最大の特徴です。
この検査において重要なのが、「磁場」に反応する金属の存在です。強力な磁石によって構成されるMRI装置は、体内に金属がある場合にその金属が磁場と干渉し、画像の乱れや体への影響を引き起こす可能性があるとされています。特に磁性金属(鉄、ニッケル、コバルトなど)で作られた体内インプラントは注意が必要です。
インプラントがある場合でも、MRI検査を安全に受けるためには、インプラントの素材と位置、体内の金属量、設置部位による磁場への干渉リスクを正確に把握することが重要です。ここではまず、MRIがどのように作動し、インプラント素材にどのような反応を示すのかを理解することが第一歩となります。
磁力と電波が画像を生成する仕組み
MRIの基本構造と原理
項目 | 内容 |
検査方式 | 磁場・電波による非侵襲的な断層撮影 |
放射線使用 | 使用しない(X線・CTとは異なる) |
主な検査対象 | 脳、脊椎、関節、内臓、血管など |
対象物質 | 水分子の水素原子(体内の多くが水分のため画像化しやすい) |
金属との関係 | 磁性金属があると画像にアーチファクト(乱れ)を引き起こす可能性 |
このような特性により、MRIではインプラントや人工関節、入れ歯、ペースメーカー、歯科矯正器具など、体内や口腔内にある金属の種類や位置によって安全性と検査の精度に差が出ることが知られています。
実際の検査時には、インプラントの種類(チタン、ジルコニア、コバルトクロムなど)を医師に申告することが求められます。素材によっては、検査中に画像の一部にノイズが生じたり、金属が微細に振動したりするケースが報告されているため、事前確認は必須です。
特に整形外科領域や脳神経領域のMRI撮影時には、歯科金属の影響が検査画像に現れることがあるため、歯科医師と放射線技師との情報共有が推奨されます。
磁場が強くなる高解像度MRI(3.0テスラなど)では、1.5テスラに比べて金属への影響が顕著になる場合もあり、機器の仕様や設置環境によっても対応が異なります。そのため、受診前に「MRI検査対応の素材」であるかどうかを把握し、自身のインプラントが検査可能かどうかを判断することが、安全な検査実施の前提となります。
インプラントをしていてもMRI検査は不可能ではありません。しかし、素材や設置状況により影響が異なるため、「MRI検査に適合したインプラントであるか」という確認と、適切な申告が、検査精度と安全性の確保には不可欠です。
インプラント治療後にMRIを受けるリスクはある?
インプラント治療後にMRIを受けることに不安を感じている方は少なくありません。特に「インプラントがあるとMRI検査ができないのではないか」「体に悪影響があるのではないか」という疑問は多くの患者が抱く悩みです。結論から述べると、多くの現代的なインプラントはMRI検査に対応していますが、条件次第ではリスクも存在します。
まず、リスクを分けて考える必要があります。大きく分けて次の4つの視点があります。
1 金属が原因でMRI画像が乱れる(アーチファクト)
2 金属が磁場により振動または発熱するリスク
3 検査装置の磁力強度により症状が変化する可能性
4 インプラントが古く素材が不明である場合の不確実性
特に注意が必要なのは、「古いインプラント」や「素材不明のインプラント」を使用している方です。20年以上前のインプラントには、コバルトクロム合金やその他の磁性金属が使われている可能性があり、これらは磁力に反応しやすく、画像の乱れや微細な発熱を引き起こすことがあります。
以下のようなインプラント素材ごとのMRI対応状況を知っておくことが重要です。
インプラント素材別 MRI検査対応状況
素材種類 | MRI対応可否 | 主な特徴 | リスクレベル |
チタン | 対応可能 | 非磁性金属であり、現在の主流素材 | 低 |
ジルコニア | 対応可能 | 非金属・セラミックであり影響なし | 極低 |
コバルトクロム | 条件付き対応 | 磁性があるためアーチファクトの可能性あり | 中~高 |
ステンレス鋼 | 非推奨 | 磁性があり、画像に強い影響を与える | 高 |
不明 | 要確認 | 素材が不明な場合は申告・検査延期が必要 | 未定義 |
また、インプラントを複数本埋入している場合や、オーバーデンチャー(着脱式義歯)といった上部構造に磁石を利用しているケースでは、磁気干渉の可能性も考慮しなければなりません。
現代では、多くの歯科医院が「MRI対応インプラント」としてチタン製やジルコニア製の素材を採用しており、通常であれば問題なく検査を受けられます。しかし、それでも医院側に申告しない限りは安全確認が取れません。
特に、整形外科や脳神経外科などでMRIを受ける機会がある場合には、事前にインプラントの素材を歯科医院で確認し、検査機関に伝える体制を整えることが大切です。
安全に検査を受けるためには「素材の把握」「申告の徹底」「適切な相談」の3つが鍵となります。疑問を放置せず、医療機関と連携することで、安心してMRIを受ける準備を整えましょう。
インプラント素材によるMRIへの影響比較!チタン・コバルト・ジルコニアの違い
チタン製インプラントは安全?磁性の有無と影響を解説
MRI検査を控えた方の中で「インプラントがあるとMRIを受けられないのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。なかでも現在最も多く使用されている「チタン製インプラント」がMRIにどのような影響を及ぼすのか、また安心して検査が可能かどうかは非常に重要な情報です。
まず結論から言えば、チタン製インプラントはMRI検査において安全性が高い素材として世界中の歯科医療で評価されています。その理由は、チタンが非磁性体であり磁力に反応しない特性を持つからです。
MRIは強力な磁場と高周波を使って体内の状態を詳細に画像化する検査方法です。このため、金属が体内にある場合には磁場による引き寄せ、または高周波による発熱などが問題視されます。しかしチタンは磁場にほとんど反応せず、電波も吸収しにくいため、画像に与える影響が極めて少ないとされています。
MRI検査時におけるインプラント素材ごとのリスク
素材名 | 磁性の有無 | MRI画像への影響 | 発熱リスク | 国内主流使用状況 |
チタン | なし | ほぼなし | 非常に低い | 非常に多い |
コバルトクロム | あり | 中程度 | 高め | 古い症例で存在 |
ジルコニア | なし | ほぼなし | 非常に低い | やや増加傾向 |
また、歯科用チタンは純度の高い「純チタン」や「チタン合金」が使用されており、歯科医院では医療用としてMRI対応済みの製品を使用しているケースがほとんどです。製品によってはMRI対応の有無が明記されていますので、インプラント手術を受けたクリニックや歯科医師に「素材の種類」「製品の対応状況」を確認することも大切です。
実際のケースとしては、MRI検査前に技師が金属の有無を問診し、チタン製インプラントであればそのまま検査を実施することが一般的です。ただし、検査部位とインプラントの位置によっては多少の画像ノイズが発生する可能性があるため、事前に情報を正確に伝えることが検査の質と安全性を高めるポイントとなります。
チタンインプラントに関してよくある質問
- チタンでも発熱することはないのか?
→ 一般的に発熱リスクは極めて低く、現代のMRI装置では温度上昇はほぼ確認されていません。 - 骨に固定されたインプラントが磁力で動いたりしないのか?
→ チタンは磁力に反応しないため、引き寄せられたり動いたりすることはありません。 - チタン以外の素材の可能性はあるか?
→ 一部の安価な海外製インプラントで合金比率が異なる製品もあり得ます。事前確認が重要です。
このように、チタン製インプラントはMRIに対して非常に安全性の高い素材であり、安心して検査を受けられるインプラントの代表格です。
ジルコニアやセラミックなどの非金属素材の特徴
近年注目されているインプラント素材の一つが、ジルコニアやセラミックといった非金属素材です。これらは見た目の美しさだけでなく、金属アレルギーの心配が少なく、MRIとの相性にも優れているという特徴を持っています。
ジルコニアはセラミックの一種であり、非常に硬くて丈夫なうえ、磁性を持たないためMRI検査時の画像乱れや発熱のリスクがほとんどありません。また、ジルコニアは白い素材であるため、歯ぐきの薄い方でも金属色が透けず、審美性が非常に高い点も評価されています。
ジルコニアやセラミックの特性
素材名 | 見た目の美しさ | 金属アレルギーのリスク | 磁性の有無 | MRIへの影響 | 主な用途 |
ジルコニア | 非常に高い | なし | なし | なし | 上部構造・人工歯根 |
セラミック | 高い | なし | なし | なし | 被せ物・上部構造 |
ジルコニアインプラントは、特に金属アレルギーのある患者にとっては非常に魅力的な選択肢です。さらに、MRI検査においてもノイズや発熱の心配がないため、整形外科や神経科などでの撮影が必要な方にとって理想的といえます。
ただし、デメリットとしては費用が高めであること、症例によっては骨結合の初期安定性に課題があるとされることもあります。歯科医師としっかり相談し、自身の治療方針や健康状態に合った素材を選択することが重要です。
また、国内では依然としてチタン製が主流であり、ジルコニア製インプラントの取り扱いがないクリニックもあります。そのため、希望する素材がある場合は事前に問い合わせておくことが失敗しないポイントとなります。
MRI対応だけでなく、長期的な審美性やアレルギー対策を含めた総合的判断が、納得のいくインプラント選びにつながるでしょう。
コバルトクロムなど古いインプラントのMRIへの影響
コバルトクロム合金は、かつてインプラントや義歯などの分野で広く用いられていた金属素材です。しかし現代では、MRIとの相性や金属アレルギーのリスクなどから使用頻度は減少しています。
最大の懸念点は、コバルトクロムが磁性を持つ金属であるため、MRI検査時に画像の乱れや発熱のリスクが高いことです。また、インプラントの位置が頭部や頸部に近い場合、検査部位と重なることで診断精度に影響を与える可能性があります。
特に以下のような事例が報告されています。
- 頭部MRI撮影時に、上顎インプラント(コバルトクロム製)が画像の一部を遮断
- 検査中にインプラント部位周辺の軽度な発熱感を訴える
- 旧式のインプラント情報が不明で、MRI検査の延期を余儀なくされる
これらの事例からもわかるように、古いインプラントはMRIにおいて予測できない問題が生じるリスクがあります。特に昭和~平成初期に施術されたインプラントの中には、素材の記録が不明瞭なケースも多く、現代の基準に照らして確認が必要です。
素材別にMRIへの影響と対応方針
素材 | MRI画像への影響 | 発熱リスク | 対応の推奨事項 |
チタン | ほぼなし | 非常に低い | 通常通り検査可能 |
ジルコニア | なし | なし | 安全に撮影可能 |
コバルトクロム | 高い | あり | 医師への事前申告と画像部位の再調整が必要 |
また、素材に関する正確な情報がない場合は、インプラントを施術した歯科医院に問い合わせることが必要です。インプラントのメーカー・製品番号などがわかれば、対応可否の判断が格段にスムーズになります。
MRIを受ける前に、自身のインプラント素材がMRIに対応しているかを確認し、リスク回避と安心検査のための準備を行うことが、診療の質と安全を大きく左右するポイントとなります。
古いインプラントはMRIに影響する?リスクと確認方法
古い素材でトラブルが起きる理由と具体例
MRI検査は磁場と電波を用いて体内の構造を撮影する非常に高精度な医療用画像診断技術です。しかし、インプラントが体内にある場合、特に古いタイプの素材で製造されたものについては、MRIとの相性に不安を抱く患者が少なくありません。
特に1990年代以前に製造されたインプラントでは、現在主流のチタン素材ではなく、磁性を持つ金属が使用されていたケースが存在します。磁性金属はMRI装置の強力な磁場と反応し、画像にノイズが入ったり、インプラントが微小に移動するといった問題を引き起こす可能性が報告されています。これは画像診断の精度を低下させるだけでなく、安全面でも懸念されます。
年代ごとに使われてきた主要なインプラント素材の違い
製造年代 | 主な素材 | MRIとの相性 | 問題の可能性 |
~1980年代 | ステンレス鋼、金合金 | 不適合あり | 磁性あり、加熱・移動リスクあり |
1990年代 | コバルトクロム合金 | やや不適合 | 一部に磁性あり、画像乱れも |
2000年代~ | チタン・ジルコニア | 適合良好 | 磁性なし、原則問題なし |
特にステンレス系やコバルトクロム系のインプラントでは、以下のようなトラブルが報告されています。
・MRI撮影時に発熱や違和感を訴える
・画像に黒い影や乱れが発生し、診断が困難になる
・一部のケースで撮影を断られる
例えば、ある整形外科病院での事例では、1980年代に顎部インプラントを装着した患者が脳のMRI検査を受けた際に画像の乱れが確認され、再撮影が必要となったケースがありました。この事例では、磁力の影響による金属の振動が考えられ、インプラントの素材がMRI非対応だったことが判明しています。
こうした事例は決して稀ではなく、特に装着してから10年以上が経過している患者にとっては、MRIを受ける前にインプラントの素材確認が極めて重要です。
また、素材の違いだけでなく、上部構造が金属製か非金属製かによっても影響は変わります。たとえば、セラミックの上部構造であれば影響はほとんどありませんが、金属製のクラウンなどを併用しているとその部分に磁力の影響が及ぶこともあります。
安心してMRI検査を受けるためには、インプラントの製造時期や素材構成を正確に把握しておくことが鍵です。製造年月や設計情報が記載された診療記録や保証書などを事前に確認しておくことも、重要なリスク対策の一つとなります。
特に以下のような場合には、早急に歯科医院へ相談することが推奨されます。
・装着から15年以上経過している
・素材の説明を受けていない、記録がない
・歯科医院が既に閉院しており、情報が不明
MRI検査時の安全性と診断精度を守るためにも、自分のインプラント素材について知識を持つことが、将来の健康リスクを大きく軽減する第一歩となります。
歯科医院での素材確認の流れとチェックリスト
自分が装着しているインプラントの素材がMRI検査に影響するか不安を抱えている方にとって、最も確実で安全な方法は、専門の歯科医院でインプラントの素材を確認してもらうことです。ここでは、その具体的な確認の流れと、患者自身がチェックできるポイントを詳しく解説します。
素材確認の一般的な流れ
- 問診と履歴の確認
- レントゲン・CT検査による構造把握
- 使用素材の推定と説明
- 必要に応じた書類発行(紹介状や素材証明)
特に高精度な歯科用CT検査を活用することで、上部構造やアバットメント、人工歯根部の形状や密度から素材をある程度特定することが可能です。加えて、以下のような質問に歯科医師が丁寧に答えてくれることで、患者の不安を解消しやすくなります。
・このインプラントはチタン製か?
・上部構造の素材に磁性金属は含まれていないか?
・MRIに支障があるか、紹介状は必要か?
・整形外科でのMRIにどのような配慮が必要か?
歯科医院を受診する前に患者自身でチェックしておくべき項目
チェック項目 | 内容 |
装着時期の確認 | いつインプラントを装着したか |
保証書や説明書の有無 | 製品名・素材名が記載されているか |
診療記録の入手可能性 | 通院していた歯科医院の記録が残っているか |
上部構造の素材 | 金属製かセラミックなど非金属か |
他部位への医療用インプラントの有無 | 人工関節・ペースメーカーなどの併用があるか |
これらの情報を整理しておくことで、歯科医院での診察や整形外科でのMRI対応がスムーズになり、無用な検査中断やトラブルを回避できます。
また、紹介状が必要な場合には、歯科医院から医科に向けた詳細な素材情報や注意点が記載された文書を発行してもらえることが多く、整形外科の医師も安心してMRIを施行できるようになります。
「MRIを受けたいがインプラントが心配」という読者に対して、このように自分自身が能動的に行動できるチェックリストと明確な手順を示すことで、不安を安心へと変える導線を確保することができます。
歯科医院での診察に時間がかかると思い込んで後回しにしてしまうケースも見られますが、素材確認は15~30分程度で完了するケースが多く、予約制で待ち時間も少ない医院が増えています。
「後でいいや」ではなく、「今すぐできること」として行動に移せる情報提供が、健康維持と安心につながるポイントとなります。
MRI検査で画像が乱れる?インプラントによるアーチファクトとその対処法
アーチファクト(画像乱れ)とは?現象とメカニズム
MRI検査を受けた際に、「画像が不鮮明だった」「診断結果がはっきりしなかった」と感じた方の中には、インプラントによるアーチファクトが原因となっていたケースもあります。アーチファクトとは、MRI画像に現れる人工的なゆがみや影、ノイズのことで、検査精度に重大な影響を与えることがあります。特に口腔内に金属製のインプラントがある場合、磁場との相互作用によってこの現象が生じる可能性が高まります。
アーチファクトが発生する仕組みは、MRIの特性に深く関係しています。MRIは強力な磁場と電波(ラジオ波)を利用して体内の水素原子の動きを捉え、画像化する医療機器です。しかし、インプラントなどの金属素材が体内にあると、磁場を乱したり電波を反射・吸収したりすることで、画像に歪みや不明瞭な部分が発生します。
特に下記のような素材の違いや装着部位がアーチファクトの発生に影響します。
金属インプラントとアーチファクト発生率の比較
素材名 | 磁性の有無 | アーチファクト発生の可能性 | 主な設置場所 |
チタン | ほぼ無磁性 | 極めて低い | 顎骨インプラント、整形用ネジ等 |
コバルトクロム | やや磁性あり | 中程度 | 古い義歯、骨固定用パーツなど |
ステンレス | 強い磁性あり | 高い | 外科的固定具、古い金属パーツ |
ジルコニア | 非金属 | ほぼ発生しない | 審美インプラント、ブリッジ等 |
チタンやジルコニア製のデンタルインプラントは近年多くの歯科医院で導入されており、MRI検査との親和性が非常に高く、安全性も高いとされています。一方、古いインプラントや整形外科手術で使われた磁性を帯びた金属は、アーチファクトを生みやすく、画像の一部が読み取れなくなる可能性があります。
こうした画像の乱れは、診断の精度に大きく影響を及ぼすこともあります。例えば脳や頸部、頭頸部領域のMRI検査では、口腔内の金属インプラントが影響を与えるリスクが高いとされており、必要な病変が隠れてしまう恐れもあるのです。
これに対応するため、近年のMRI装置では金属アーチファクトを軽減するための特殊な撮影モード(例えばSE法やMAVRIC、SEMACといった技術)も開発されています。ただし、すべての施設でこうした機器を導入しているわけではなく、事前に確認が必要です。
また、検査前に医療機関へ以下の情報を正確に伝えることが非常に重要です。
医師に伝えるべきポイント(チェックリスト)
- インプラントの種類(チタン製かジルコニアかなど)
- 装着した時期と歯科医院名(記録が残っているか)
- 体内に他の金属(整形用ボルトや人工関節など)があるか
- ペースメーカーや人工内耳の有無
- 検査部位とその周辺の金属装着状況
こうした事前情報があれば、医師はアーチファクトを回避しやすい撮影角度や条件を設定できるため、より正確な画像診断につながります。インプラント治療を受けた方は、可能であれば装着時に交付されたインプラントカードなどを保管しておくと安心です。
検査時のトラブル事例と医師の対応策
実際にMRI検査を受けた患者の中には、金属インプラントによって画像の一部が見えづらくなる、もしくは再検査が必要になるという事例が報告されています。以下は実際の医療現場でよく見られるトラブルのパターンと、それに対する医師の対処法の一部です。
よくあるトラブルと対策事例
トラブル内容 | 原因 | 医師の対応策 |
頭部の画像に黒い影が入り病変が見えない | チタン以外の金属インプラントによる磁場の乱れ | 撮影角度変更・撮影シーケンスの調整 |
鎖骨付近の画像に強いノイズ | 整形外科手術で入れた金属プレート | 部位を避けた再撮影・アーチファクト補正法を活用 |
顎部のMRIで一部ブレが発生 | 顎インプラントによる磁力干渉 | MAVRICやSEMACなどのアーチファクト抑制モード使用 |
撮影後に歯茎が軽く熱を持ったように感じた | 金属の発熱反応(稀に発生) | 撮影中止、冷却処置、代替検査(CTなど)へ切替 |
このようなトラブルは、医療機関が事前に情報を把握していれば多くが回避可能です。問題の根本は「患者が自分の体内に何の素材が入っているかを正確に把握していない」ことにあります。特に10年以上前にインプラント治療を受けた方は、当時の記録が手元に残っていないことも多く、歯科医院への問い合わせが必要になることもあるでしょう。
また、歯科医師と検査を行う放射線科医との連携も重要です。どのような素材で、どの位置に金属が入っているかが分かれば、医師は適切な診断を行うための準備ができ、アーチファクトによる影響を最小限に抑えることが可能です。
再検査にならないために注意したいポイント
- インプラント装着前に、将来的なMRI対応素材を選ぶ
- 検査前には必ず申告書に正確に記載する
- 自分の装着物情報はカードや書類で保管
- 医師から説明を受けた内容は家族にも共有する
こうした配慮があることで、患者自身が不要なリスクや再検査の手間を避け、より安心してMRI検査に臨むことができるようになります。
MRIとインプラントが共存できる現代の医療技術を活かすためには、正確な情報提供と、信頼できる歯科医院・医療機関との連携が不可欠です。特に高齢化社会が進む中で、今後もインプラントとMRIの共存は重要なテーマであり、患者自身の理解が何より大切になります。
まとめ
インプラントを入れている方にとって、MRI検査は不安要素の一つです。とくに金属や磁場に反応する素材が体内にある場合、画像が乱れるアーチファクトのリスクや、まれに発熱などの影響が出るケースも報告されています。
しかし、すべてのインプラントがMRIに対応していないわけではありません。現在ではMRI対応素材として知られるチタン製のデンタルインプラントが多く採用されており、実際には大きな問題が起こらないケースも多く存在します。とはいえ、検査前に自身のインプラントの素材を確認し、医院やクリニックに正確な情報を伝えることが、安全な検査の第一歩となります。
実際、厚生労働省が医療機関を対象に行った調査でも、MRI検査前にインプラントに関する情報提供が不十分なことで、検査の延期や中止に至る例が一定数存在することが確認されています。これは患者にとっても医療現場にとっても不利益であり、未然に防げるトラブルといえます。
「自分のインプラントはMRIに影響があるのか」「検査時に注意すべき点は何か」と迷う方も多いですが、この記事で紹介した通り、素材確認の方法、歯科での相談時の伝え方、そして検査に支障が出た場合の対応策まで知っておくことで、リスクは大きく軽減されます。
放置すると、検査が受けられず診断の遅れや不安が残り続ける可能性もあります。インプラントとMRIの関係を正しく理解し、必要な準備をしておくことが、安心して医療を受けるための近道です。今のうちから一つずつ確認しておくことが、将来の安心につながります。
海岸歯科室は、患者様一人ひとりに寄り添い、安心して治療を受けていただける環境をご提供しています。最新の設備と技術を駆使し、虫歯治療からインプラント、予防歯科まで幅広い診療を行っています。お口の健康を守るために、丁寧なカウンセリングと治療計画を立てています。皆様のご来院を心よりお待ちしております。歯に関するお悩みは、ぜひ海岸歯科室へご相談ください。

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よくある質問
Q.MRI検査前にインプラントの素材を確認する必要は本当にあるのでしょうか
A.はい、インプラント素材の確認は極めて重要です。とくに金属成分を含む素材は、MRIの磁場に影響を与える可能性があり、アーチファクトと呼ばれる画像の乱れを引き起こすことがあります。特に2000年以前に施術されたインプラントには、磁力の強いコバルトクロム系金属が使われているケースも多く、検査の中断や再撮影が必要になる例が報告されています。チタン製やジルコニア製などMRI対応の素材であっても、事前に歯科医師や医院で明確に確認しておくことで、検査時のトラブルや無駄な診療コストを避けることができます。
Q.インプラントがあるとMRI検査で追加料金がかかるのですか
A.基本的にMRI検査自体の料金は全国一律で保険適用3割負担なら約5000円前後が一般的です。しかしインプラントの存在が事前に申告されず、検査を延期または再実施する事態になると、CT検査の追加費用や再予約による通院コストが1回につき3000円〜8000円程度増加する可能性があります。また、整形外科や脳神経外科での検査では歯科との情報連携が不十分なこともあり、検査時のトラブル発生率が高くなるため、金属の種類や装着箇所などを医師へ正確に伝えることで費用の無駄を最小限に抑えられます。
Q.高齢者がインプラントをしているとMRI検査で注意すべきことは何ですか
A.高齢者の方はインプラントの治療時期が古いことが多く、使用されている素材が現在のMRI対応基準を満たしていないケースも見受けられます。加齢により心疾患や人工関節、ペースメーカーなど複数の医療用装置を体内に保持している場合、MRI検査全体における磁気影響リスクが複合的に増大します。そのため、歯科医院での素材確認と医師への正確な情報申告が必要不可欠です。MRI撮影中の発熱や異常反応の事例も報告されているため、安全性を高めるには検査3日前までには準備を済ませておくことが推奨されます。
Q.MRI検査当日に歯科の情報を伝え忘れた場合、どうなりますか
A.検査中に磁気反応や画像異常が起きた場合、医師がインプラントの影響を疑い検査を中止することがあります。その際、再撮影のために数日〜1週間後の再予約となり、再診料や再撮影費が1万円以上かかるケースも報告されています。また、緊急性の高い検査であれば、診断の遅延が健康被害に直結する可能性もあります。MRI検査時には、必ず事前に「歯科で治療した時期」「インプラントの種類」「装着部位」「医院名」を伝えることが、検査の安全性と時間短縮に繋がります。備えを怠ることで、精神的・金銭的負担を被るリスクがあるのです。
医院概要
医院名・・・海岸歯科室
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