自分自身が歯ぎしりをしていることに気付いたり、家族が歯ぎしりをしているのを見たりして、放置しても大丈夫なのか心配している人は多いはずです。そこで本記事では、大人・子どもの歯ぎしりの原因をわかりやすく解説します。自宅でできる予防法もお伝えするので、本記事を読みながらさっそくお試しになってください。

 

歯ぎしりとは?

上下の歯を擦ったり、噛み締めたり、ぶつけたりする行為のことです。大半の人が就寝中に歯ぎしりをするため自覚症状がありませんが、起きているときに歯ぎしりをする人もいます。歯ぎしりの種類は大きく3つに分かれ、内容は次のとおりです。

 

<歯ぎしりの種類>

  • グラインディング・・・強い力で上下の歯を横に滑らせる行為
  • クレンチング・・・上下の歯を強く噛みしめる行為
  • タッピング・・・上下の歯をカチカチと小刻みにぶつける行為

 

とくににグラインディングは上下の歯に対して非常に強い圧力がかかるため、上下の歯に大きなダメージが加わります。頻繁に歯ぎしりをする人の場合、上下の歯の接地面が削れて平らになっていることも少なくありません。また、最悪の場合には歯が割れる・欠けるといったトラブルが起こることもあります。

 

歯ぎしりは放置してもいい?

歯ぎしりを放置することはおすすめできません。先述したように歯が擦り減るリスクがありますし、就寝中などに歯が割れる・欠けるといったトラブルが起こる可能性もあります。それ以外にも、以下のように全身で不調が生じる場合もありますから、できる限り早く対処しましょう。

 

<歯ぎしりが引き起こす全身の不調>

  • 歯茎にダメージが加わって歯周炎、歯肉炎、歯槽膿漏が起こりやすくなる
  • 歯ぎしりの圧力に顎が耐えきれず、顎関節症を発症するリスクが上がる
  • 頭痛や肩こりの原因になる場合がある
  • 睡眠時無呼吸症候群との関連性が指摘されている

 

睡眠時無呼吸症候群は命にかかわる病気でもあります。突然死のリスクを防ぐためにも、この記事を読みながら対処法を試し、改善できない場合は歯科医院に相談しましょう。

 

歯ぎしりの原因3つ

歯ぎしりの原因として考えられるのは以下の3つです。

 

<歯ぎしりの原因3つ>

  1. ストレス
  2. 食いしばりの癖
  3. 噛み合わせの問題

 

歯ぎしりが発生するメカニズムを見ていきましょう。

 

①ストレス

仕事をしながら頭を抱える女性

歯ぎしりの原因の多くがストレスに由来するといわれています。人間はストレスを抱えたまま就寝すると、無意識のうちに歯を食いしばってストレスを解消しているようです。逆にいえば、歯ぎしりはストレス解消法のひとつとして行っているものなので、ストレスを減らすことが歯ぎしりをなくすことにつながると考えられます。

 

②食いしばりの癖

日常的な食いしばりの癖が歯ぎしりにつながることもあります。先述したとおり、人間はストレスを感じると無意識に口に力を入れる傾向があるため、ストレスのため過ぎには注意しなければいけません。また、力仕事をしている人や、スポーツをしている人にも食いしばりの癖を持つ人が多く、自覚している人は要注意です。

 

③噛み合わせの問題

噛み合わせに問題がある人も歯ぎしりを起こしてしまいがちです。噛み合わせたときに特定の歯がぶつかったり、詰め物や被せ物が他の歯と接触したりすることが歯ぎしりの原因になります。

 

この問題の解決策は状況により異なります。そもそも歯並びが悪い場合は、正しい位置に歯を動かせる歯列矯正が有効です。詰め物や被せ物が合わずに噛み合わせを乱している場合は、その箇所を調整したり、インプラントに入れ替えたりすると、噛み合わせの問題は起こりにくくなります。

 

【子ども】噛み合わせを整えている

歯ぎしりをしているのが子どもの場合、噛み合わせを調整しているだけの可能性が高く、そのまま放置していて構いません。乳歯が抜けて永久歯に変わるまでの間は、違和感や不快感が生まれやすく、就寝中などに歯ぎしりを起こす場合が多いのです。

 

この場合の歯ぎしりは一過性のものであり、成長してすべての歯が永久歯に生え変われば自然と改善されます。小学生~中学生の間に起こる歯ぎしりには干渉しすぎず、しばらく様子を見たうえで歯科医院に相談するか考えましょう。

 

歯ぎしりの予防・対策法3つ

自身の歯を指さしながら微笑む女性

歯ぎしりの予防・対策法として有効なのは以下の3つです。

 

<歯ぎしりの予防・対策法3つ>

  • 起きている間の食いしばりの癖を抑制する
  • マウスピースを用いる
  • 薬を用いて筋肉の緊張を解く

 

いずれも有効な解決策になりますから、簡単にできることから順番に試してみましょう。

 

起きている間の食いしばりの癖を抑制する

起きている間に歯ぎしり・食いしばりを起こすことが多いならば、歯ぎしりをしないように意識付けて癖を抑制しましょう。これは「認知行動療法」と呼ばれる対処法で、外出先だけでなく自宅でもできますし、対策のために購入しなければならないものもありません。

 

認知行動療法はとてもシンプルです。仕事中や勉強中などの集中することが多いタイミングで、歯を噛みしめていることに気付いたら、上下の歯を浮かせて緩和させるだけで構いません。繰り返すことで噛み癖をなくせる場合があり、日中の食いしばりを防ぎやすくなります。

 

マウスピースを用いる

マウスピースを装着する女性

就寝中に歯ぎしりが多い場合は、マウスピースの装着が有効です。夜間に装着して歯ぎしりを防ぐマウスピースのことを「ナイトガード」と呼びます。ナイトガードは歯科医院で制作でき、保険適用の対象にもなりますから、目安として2,000~3,000円で購入が可能です。

 

使い方は簡単で、就寝前にマウスピースを歯にはめ込んで、そのまま寝るだけです。マウスピースを付けていると、仮に歯ぎしりをしたとしても、マウスピースが緩衝材になって歯を守ってくれます。歯ぎしりそのものをなくせる対処法ではありませんが、歯が擦り減ったり、欠けたりすることを避けるうえで有効です。

 

薬を用いて筋肉の緊張を解く

薬を使って緊張を解き、歯ぎしり・食いしばりを起こしにくくさせる方法もあります。この治療法として有効なのがボトックス注射です。無毒化したボツリヌス菌を筋肉に注入することで筋肉の動きを弱め、緊張を解きます。1回の注射で半年程度は作用が持続するとされており、害もありません。

 

歯ぎしりは放置せずに歯科医院で相談しよう

歯ぎしりを自覚したら、放置せずに歯科医院で相談しましょう。歯ぎしりを個人で解消させるための具体策は「認知行動療法」しかありません。認知行動療法だけで解決できる場合もありますが、それだけでは防ぎきれず、就寝中の歯ぎしりで大切な歯を失ってしまう恐れもあります。

 

歯科医院では、ボトックス注射を使った歯ぎしり・食いしばりの回数を減らす対策や、マウスピースを用いてダメージを緩和させる対策が可能です。これらの治療を認知行動療法と組み合わせることで、歯を守りながら歯ぎしりからの根本的な改善を目指せます。

 

まとめ

歯ぎしりの原因として考えられるのはストレスや日ごろの癖、そして噛み合わせの問題です。自分でできる対策としては認知行動療法が有効ですが、歯を守りながら歯ぎしりを改善させたいならば、歯科医院への相談をおすすめします。

 

海岸歯科室では、具体的な歯ぎしりへの対策として「マウスピースの制作」「ボトックス注射」「歯列矯正」の3つをご案内できます。患者様の歯の状態を確認し、最適な対策と治療法をお伝えできるので、まずは当院で検査をお受けください。

 

監修:理事長 森本 哲郎