歯周病でインプラント治療はできる?できない?インプラント周囲炎の原因と予防法も解説
失った歯の治療で、機能性・審美性に優れるインプラント治療ですが、歯周病が原因でインプラント治療を諦めている方もいるのではないでしょうか。歯周病はインプラントの寿命を左右する重要なポイントです。
しかし、歯周病にかかっている場合、インプラントはできないのでしょうか。「まだ症状はひどくないし、大丈夫なのでは?」と考える方も多いでしょう。
今回は、歯周病とインプラントの関係性について解説します。インプラント周囲炎の原因や予防法もあわせて解説するので、インプラントを検討している方、歯周病でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
歯周病があるとインプラント治療はできない?
歯周病があるすべての患者さんがインプラント治療できないわけではありませんが、進行していると治療後のインプラント残存率が低いといわれています。歯周病の程度によりますが、疾患がある場合は、インプラント治療の前に歯周病治療を行う必要があります。
ただし、歯周病がかなり進行して骨の厚みや量が不十分な場合は、インプラント治療ができません。インプラント治療を希望する場合は、医師とよく相談するようにしましょう。
そもそもインプラントの仕組みは?
インプラントは、人工歯根(インプラント体)を顎の骨のなかに埋め込み、その上に人工歯を装着する歯科治療です。周囲の歯に頼らない独立した治療が可能で、自分の歯のような感覚で自然な食事が楽しめることが特徴です。
ただし、人工歯根を埋入するためには顎の骨に十分な厚みや量が必要で、不足する場合は増骨手術が必要なケースもあります。また、口内の環境が不衛生だと、手術中に細菌感染を起こす危険があるため、インプラント治療ができないことがあります。
歯周病があるとインプラントの寿命が短くなる3つの理由
歯周病があるとインプラントの寿命が短くなることをお伝えしました。しかし、インプラント治療と歯周病にはどのような関係があるのか気になる方もいるでしょう。
歯周病があるとインプラントの寿命が短くなる理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- インプラントが安定しない
- 外科手術ができない
- インプラント周囲炎のリスクが高い
では、それぞれくわしく見ていきましょう。
①インプラントが安定しない
インプラントは顎の骨のなかに人工歯根を埋め込む歯科治療です。歯周病が進行して顎の骨が溶けている状態では、インプラント体が安定せず短期間で脱落する可能性が高まります。また、歯周病は歯茎が細菌感染を起こしている状態です。細菌が多い環境ではインプラント体と骨の結合を妨げ、いつまでもグラグラと安定しない状態が続いてしまうケースがあります。
②外科手術ができない
インプラント治療は、歯茎を切開して骨に穴を開け、インプラント体を埋入する外科手術がともないます。しかし、歯周病にかかっていると、手術中に細菌感染を起こしてしまう危険性が高まります。リスクの高い状態で治療を進めることはできないでしょう。
また、糖尿病を患っている方は歯周病になりやすいなどの特徴があるため、全身の基礎疾患が原因で外科手術が行えないケースもあります。インプラント治療を検討する場合は、歯周病の他に病気がないか確認する必要があります。
③インプラント周囲炎のリスクが高い
インプラントは人工物ですが、天然歯と同じようにインプラント周囲炎にかかる可能性があります。インプラント周囲炎とは、天然歯でいう歯周病のことで、インプラント周辺の組織が細菌感染を起こしてしまう病気です。ただし、インプラントは人工物のため細菌と戦う力がなく感染スピードが速いことが特徴です。
歯周病にかかっているとインプラント周囲炎になるリスクが高まるため、口内環境が良好な状態になるまではインプラント治療は受けられません。
治療中はインプラント周囲炎のリスクがある
インプラント周囲炎を予防するためには、インプラント治療前に歯周病治療を完全に完了させておくことが大切です。歯周病の症状が落ち着いたころにインプラント治療を並行して進めてしまうと、インプラント周囲炎に感染するリスクが高まります。また、歯周病だけでなく、残った歯の虫歯治療もインプラント治療前に完了させておきましょう。
インプラント周囲炎の4つの原因と予防方法
インプラント周囲炎は歯周病と同様に、軽度から中度では痛みなどの自覚症状があまりないことが特徴です。そのため、インプラント周囲炎は重度に進行してしまう前に、しっかりとした予防対策が大切です。
インプラント周囲炎の原因と予防には、以下の4つが挙げられます。
- 不衛生な口腔環境
- 糖尿病
- 喫煙
- 貧血
では、それぞれくわしく見ていきましょう。
①不衛生な口腔環境
インプラント周囲炎だけでなく、歯周病や虫歯の原因にもなるのが歯垢や歯石がたまった状態の不衛生な口腔環境です。磨き残しなどから歯周病菌が繁殖して、歯周病やインプラント周囲炎を進行させるため、日ごろのセルフケアがとても重要といえます。
また、インプラント治療前に歯周病や虫歯の治療は完全に終わらせておくことも大切です。一度に進めると時間がかかる場合もあるので、日ごろから定期的に歯科医院でのクリーニングを受け虫歯や歯周病のチェックもしておきましょう。
②糖尿病
糖尿病になると歯周病を発症しやすいといわれています。また、糖尿病を患っていると術後の傷口の治りが遅かったり、骨とインプラント体の結合に悪影響を及ぼしたりする恐れがあります。糖尿病もインプラント周囲炎も自然と治癒することはないので、適切な対応を早期に進めていくことが大切です。
糖尿病の予防は生活習慣を見直すことが重要で、なかでも健康的な食事に気を付ける必要があります。また、過度な飲酒や喫煙も控え適度に運動するよう心がけましょう。
③喫煙
喫煙すると白血球の機能が低下するため、歯周病菌に対抗する力が低下してしまいます。喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎にかかるリスクが2~6倍も高くなるといわれており、なかでも1日に10本以上吸う方はさらにリスクが高くなってしまいます。
喫煙はインプラント周囲炎だけでなく、全身にも悪影響を及ぼします。インプラント周囲炎の予防と全身の健康のためにも、禁煙の努力が大切です。
④貧血
貧血によってインプラント周辺の組織が酸素不足になると、術後に感染症を引き起こしやすくなります。インプラント周囲炎になる可能性もあるため、貧血状態になってしまわないよう注意が必要です。
貧血の予防には鉄分などのサプリメントも有効ですが、3食バランスよく食事を取ることが大切です。また、良質なたんぱく質や鉄の吸収を高めるビタミンCも摂るように心がけるとよいでしょう。
まとめ
歯周病とインプラントの関係について解説しました。インプラントを長持ちさせるためには、口内環境が良好であることが大切です。現在、インプラント治療を検討している方は、虫歯や歯周病になっていないか、歯科医院で確認してもらいましょう。
海岸歯科室では、国際インプラント学会の指導医である院長がインプラント治療を担当しています。インプラントに関する治療の相談などございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
監修:理事長 森本 哲郎