矯正中に歯がグラグラしても大丈夫?原因や注意点を詳しく解説
- 2024年7月13日
- コラム
矯正中に歯がグラグラすると「抜けてしまうのでは?」と心配になる方も多いようです。しかし、矯正中に歯がぐらつくのは、一般的な症状です。矯正装置によって歯が動く際に、歯がぐらつく可能性があります。
このコラムでは、矯正中に歯がグラグラする原因や注意点、病院を受診した方が良いケースなどを紹介するので、矯正中の歯のグラグラが心配な方は、ぜひ最後までお読みください。
矯正中に歯がグラグラする原因
矯正中に歯がグラグラするのは、問題のある症状ではありません。ここでは、矯正で歯が動く仕組みやグラグラする理由について、詳しく紹介します。
矯正で歯が動く仕組み
矯正で歯が動く仕組みは、身体の生理的反応を利用したものです。歯の周りには歯を支えるための歯槽骨と呼ばれる骨があります。また、歯槽骨と歯根の間には、歯根膜と呼ばれる薄い膜があります。歯根膜は、歯にかかる圧力を和らげる緩衝材のような役割を持つ膜です。
矯正装置を付けて歯に力がかかると、その力は歯根膜に伝わります。歯が動く方向の歯根膜は縮み、反対側の歯根膜は引き伸ばされます。縮んだ歯根膜は元の厚さに伸びようと骨を溶かす細胞の動きが活発化し、伸びた歯根膜は骨を作る細胞を作ります。この働きを繰り返すことで、歯が徐々に動いていくのです。
歯がグラグラするのは正常な反応
矯正期間中に歯がグラグラするのは、問題のない症状といえます。矯正中は歯槽骨が歯根膜の働きによって溶けるため、歯がグラグラとすることがあるのです。歯が揺れる状態を、歯の動揺と呼びます。
歯の動揺が起こっても、歯が抜け落ちることはありません。ただし、出血をともなう大きな歯の動揺や、痛みが強い場合などは、他の問題が起こっている可能性があります。気になる所見が見つかった場合は、早めに病院を受診しましょう。
歯の動揺度について
歯の動揺は、揺れの大きさによって問題ないかを判断します。
0度 |
水平方向に0.2mm以下の動揺 |
全く問題のない状態 |
1度 |
水平方向に0.2mm~1mmの動揺 |
歯科矯正中に見られる範囲の動揺 |
2度 |
水平方向に1.0mmを超える動揺 |
注意が必要 |
3度 |
2度に加えて垂直方向の動揺 |
すぐに対処が必要 |
上記の数値を自分で判断するのは難しいですが、揺れが大きいと感じる場合はすぐに病院を受診するようにしてください。
歯がグラグラするのを感じるとき
歯のぐらつきを感じるのは、マウスピースを外したときや、矯正治療を始めたばかりのときが多いようです。歯がグラグラするのを感じやすいタイミングについて、詳しく見ていきましょう。
マウスピースを外したとき
歯科矯正には、ワイヤーを使って歯を動かすワイヤー矯正のほかに、マウスピースを使ったインビザラインという矯正方法があります。インビザラインはワイヤー矯正よりも歯にかける力が弱い治療ですが、歯のグラグラは大きくなりやすい傾向があります。
インビザラインは1日のほとんどの時間装着する必要がありますが、食事や歯磨きなどの際には一時的に外すことが可能です。外した際に歯を押さえつける力が解放され、何も支えがない状態になるため、歯のグラグラを感じやすくなるでしょう。
矯正を始めたばかりのとき
矯正し始めたばかりのタイミングでは、歯が動き始めるため、グラグラしているように感じる方が多いです。
矯正開始から時間が経ち、歯が矯正装置に慣れると、全体の歯が大きく揺れることは少なくなります。
歯がグラグラするときの注意点
矯正中に歯がグラグラすることは問題のない所見ですが、対応を間違えると揺れが悪化することがあります。歯の動揺に気がついた際は、以下の4点に注意しましょう。
- 手や舌で触らない
- 強い力をかけない
- 自己判断で治療をストップしない
- 硬いものや粘着性の高いものは食べない
注意点について、詳しく見ていきましょう。
手や舌で触らない
歯がグラグラするときは、手や舌で余計な力をかけないようにしましょう。気になって触ってしまうと、歯根膜や歯槽骨に負担がかかり、さらに動揺がひどくなる場合があります。
強い力をかけない
早く矯正を終わらせたいからと、ぐらついている歯にさらに力をかけると、歯がダメージを負う場合があります。圧力がかかると歯茎に炎症が起こったり、歯根が吸収されたり、最悪の場合は歯の神経が死んでしまうこともあります。また、強すぎる力をかけると反対に歯が動きづらくなることもあります。自分で力をかけるのは避け、自然に歯が動くのを待ちましょう。
自己判断で治療をストップしない
インビザラインで矯正治療をしている場合、自分で装置を外すことが可能です。しかし、グラグラしているからといって装置を付けるのをやめてしまうと、歯がうまく動かずに治療が失敗する可能性があります。マウスピースを外した際にグラグラが気になる方も多いですが、問題のない初見のため、治療を続けることが大切です。ただし、マウスピースを付けると痛みや出血が起こる場合は、病院に相談してみてください、
硬いものや粘着性の高いものは食べない
歯がグラグラしているときは、硬いものや粘着性の高い食べ物は食べないようにしましょう。これらを食べると歯に大きな力が加わってしまい、さらに動きが大きくなる可能性があるためです。
歯科医院を受診したほうがよい場合
歯がグラグラするのは矯正治療が順調に進んでいる証拠でもありますが、以下のような症状が起こっている場合は、病院を受診したほうが良いでしょう。
- 大きな揺れが起こっている
- 歯茎から出血がある
- 歯の色が変わっている
- 痛みが引かない
これらの症状について、下記で詳しく解説します。
大きな揺れが起こっている
多少のグラつきではなく、大きな動揺が起こっている場合は、早めに病院に相談してください。大きな動揺が起こるのは、矯正力が強すぎる場合や、歯周病が進行している場合などが考えられます。早めに処置しなければ歯や歯茎がダメージを負い、最悪の場合には抜けてしまうこともあるため、早めの受診が必要です。
歯茎から出血がある
歯茎から出血が見られる場合は、病院を受診しましょう。歯のグラグラは、矯正のよるものである可能性が高いですが、中には歯周病が原因でぐらついている方もいます。出血を伴うグラつきは、歯周病が悪化している可能性が疑われます。歯周病が悪化している場合は矯正よりも優先して治療が必要なケースもあるため、早めに病院に相談しましょう。
歯の色が変わっている
グラグラしている歯が茶色っぽい色をしている場合は、神経が死んでいる可能性があります。神経の治療を行う必要があるため、すぐに病院を受診しましょう。
痛みが引かない
矯正治療は、装置を付けたり、力を調節したりした後が一番痛みを感じやすいです。その後は徐々に痛みがおさまる傾向にありますが、いつまでも痛みが続く場合は、歯周病など他の原因も考えられるため、早めに病院に相談するようにしてください。
矯正治療終了後に歯がグラグラしても大丈夫?
矯正治療終了後は、歯を支える歯槽骨がまだ不安定な状態です。そのため、矯正期間が終了しても歯がグラグラする可能性があります。しかし、これも心配しすぎることはありません。矯正で動かした歯は、元の位置に戻ろうとする習性があるため、矯正期間後に歯がグラグラしてもするのは自然なことであるといえます。
歯のぐらつきは、保定装置を付けることで徐々に症状が良くなります。保定装置とは、歯が元に戻るのを防ぐために、一定期間付ける矯正器具のことです。矯正装置を付けていた期間とほぼ同じ期間付けるのが一般的です。
保定装置での治療に移った後半年程度は、食事や歯磨き以外の時間に保定装置を付ける必要があります。その後は就寝時のみ付けることが多いです。保定装置を付けずにいると歯が元の位置に戻りやすくなるため、必ず医師から指示された期間は付けるようにしましょう。
矯正期間終了後も歯がグラグラする原因
矯正期間終了後のグラグラは、保定装置を付けることである程度おさまります。しかし、何年経ってもグラグラが治らない場合は、下記の2つが理由の可能性があります。
- 歯根が短い
- 歯周病が進行した
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
歯根が短い
歯根が短い方は、歯がグラグラしやすい傾向があります。歯根の長さは人によって異なり、中にはもとから短い方もいます。歯根が短い方は矯正治療終了後に歯根吸収が起きやすく、歯がグラグラしやすい傾向があります。最悪の場合は歯が抜けてしまうケースもあるでしょう。歯根吸収とは、歯根が何らかの原因で溶けて消失したり、短くなったりすることを指します。矯正治療で歯に圧力をかけると、歯根吸収が起こる方もいるのです。
そのため、歯科医院では治療前に必ずレントゲン写真を撮り、歯や骨の状態をチェックしてから治療を始めます。歯根が短い方の場合は、歯にかかる力を弱めたり、負担を少なくするために短期間で治療を終わらせたりなどの工夫が必要です。腕の確かな医師であれば、配慮して治療を行ってくれるでしょう。
歯周病が進行した
矯正治療後に歯周病が進行した場合、歯が動きやすくなる可能性があります。歯周病とは、歯と歯茎の間に入った細菌が炎症を引き起こす病気です。進行すると膿が出たり歯が動いたりする症状が起こり、最悪の場合には歯を抜かなければいけません。
歯周病の傾向がありながらも矯正治療を行った場合、歯槽骨の吸収が進み、矯正治療で動かした歯が安定せずにグラグラする可能性があります。矯正治療を行う場合は歯周病治療も並行して行う必要があるでしょう。
まとめ
矯正期間中に歯がグラグラするのは、問題のある所見ではありません。矯正中は歯の根っこにある歯根が伸びたり縮んだりを繰り返して歯が動くため、一時的にぐらつきやすくなります。特に矯正を始めたばかりの時期や、マウスピースを外した際には、歯の動きを感じやすくなるでしょう。
もしも歯の動揺とともに出血があったり、歯の色が変わっていたりする場合は、すぐに病院を受診することが大切です。そのほかにも気になる症状があれば、すぐに病院に相談するようにしてください。
海岸歯科室では、ワイヤー矯正はもちろん、インビザライン(マウスピース矯正)などの治療を行っています。一人一人の歯や歯茎の状態を見て、丁寧に矯正治療を行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
監修:理事長 森本 哲郎